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年齢を重ねていくと、活動量が減るために筋肉が増えにくくなり、消化力が低下するために食欲が湧きにくくなってきます。どちらが先かというと、高齢者の場合には多くの場合、筋肉が減ることがきっかけで、運動不足から食欲が以前よりもなくなり、そのために筋肉強化に必要なたんぱく質の摂取量が減るようになります。

その結果として、筋肉が増えにくくなり、ますますエネルギー代謝が低下するという悪循環に陥りかねません。この悪循環による虚弱化はフレイルと呼ばれています。

筋肉強化の運動は個人に合わせたプログラムによって、効果のほどは推測できます。たんぱく質の摂取量も、食品に含まれている量がわかれば推測はできるものの、計算どおりにいかないのが栄養摂取の難しいところです。

たんぱく質はアミノ酸によって構成されています。身体に必要なたんぱく質は20種類のアミノ酸から作られています。この20種類のアミノ酸がすべて含まれている食品を摂れば、身体に必要なアミノ酸を効率よく摂ることができるわけです。

その20種類のアミノ酸がバランスよく含まれている食品は良質なたんぱく質と呼ばれています。これに該当する食品は、肉類、魚類、卵類、乳製品、大豆・大豆製品です。食品のたんぱく質は胃で消化されてアミノ酸に分解され、アミノ酸は小腸から吸収されます。血液中に入ったアミノ酸は肝臓に運ばれ、肝臓で身体に必要なタンパク質に合成されます。

(食品に含まれているものは“たんぱく質”、身体内のものは“タンパク質”と区別)

肝臓でタンパク質に合成されるときには、肝細胞の中の酵素が使われ、合成のためのエネルギーが必要になります。そのエネルギーを作り出すときにはビタミンC以外のすべての種類の水溶性ビタミンが必要になります。

たんぱく質の摂取とともに、水溶性ビタミンの摂取も重要になるということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

兄弟姉妹の発達障害の発現確率について、前回は自閉症スペクトラム障害を例に紹介しましたが、これを受けて親子の発現率についての研究結果について紹介します。

その研究が進んでいるのは発達障害の注意欠陥・多動性障害についてで、親が注意欠陥・多動性障害であった場合には子どもの約70%に注意欠陥・多動性障害がみられると報告されています。

これは世界的な調査で、条件によって違いがあって、50〜80%の確率で、平均すると76%となるという報告もあります。親が注意欠陥・多動性障害でなかった場合の発現率の5〜10倍高くなっています。

発現率が高いことについて、何が影響しているのかの研究が進み、遺伝要素として神経伝達物質のドーパミンやアドレナリンの分泌を増やす受容体の働きを高めすぎることと、セロトニンの分泌を増やす受容体の働きを抑えることが考えられています。現状では、興奮状態を抑えるセロトニンの分泌を少なくする遺伝子の影響との考えが有力となっています。

発達障害の発現率は10%と考えられています。文部科学省の調査では小学生・中学生のうち通常学級で学ぶ子どものうち、教師が把握している割合として8.8%と発表しています。これから考えても、10%(10人に1人)の発現率は一般の認識とも一致しています。

発達障害は生涯にわたって特性が継続する特徴があるので、親が発達障害であった場合の子どもの発現率は20%となります。親は2人いるので、5人に1人の確率です。

父親の受精時の年齢が高くなるほど発達障害の発現率が高まるとの研究もあります。中でも増えているのは注意欠陥・多動性障害です。20歳に比べて30歳では発達障害に関わる遺伝子の変異が2倍以上になるとの報告もあります。女性の出産年齢が高まり、それにつれて父親の年齢も高くなっています。

今後は、さらに親子で発達障害である確率が高まってくることが予測されるだけに、その研究と対応策の検討が重要になっていきます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

子どもの発達に必要な栄養素の補給のためには、他の家族と同じ料理を同じように作ればよいというわけにはいかないことがあります。家族の中に生活習慣病の人がいると、その人だけは別の料理を作る、同じ料理であっても内容を変えるというのは当たり前にしなければならないことです。

子どもは発達過程によって家族とは違う食事内容になることがあり、発達障害があれば、その特性に合わせて食べるもの、調理法を変えなければならないことも普通にしなければならないことです。

ところが、親の食事と同じものを食べている例があり、それも好き嫌いや成長を配慮したものではなくて、家族の健康のためにも問題がある食事となっている例もあります。

親のダイエットに付き合わされているという例もあります。以前は母親のダイエットのための食事を子どもも食べているということが多かったのですが、今では父親のメタボ対策で食事の内容が低エネルギー量になったり、おかずの種類が減って、栄養摂取が低下しているという例もあります。

朝食は飲み物だけという家庭もあり、朝食を食べたくても食べるものが食卓に乗らないということもあります。中には飲み物があればよいほうで、何もないということも実際にはありました。

栄養補給のための補助食品やゼリー、サプリメントを摂っているから大丈夫と考える保護者も少なからず存在しています。これは朝食には当たらないというのが厚生労働省の見解で、厚生労働省による国民健康・栄養調査でも飲み物や補助食品などだけの摂取は朝食を食べたこととしてカウントされていません。

ライオン株式会社は、株式会社日立製作所の日立健康管理センタと協働で、企業における歯科健診の導入と従業員の口腔・全身の健康に及ぼす影響について調査研究を行っていて、その概要については前回(健康デザイン11)紹介しました。

研究の結果、オーラルケア行動(1日の歯みがき回数、フロス使用率、歯科通院率)の実践頻度が増加した従業員では、プレゼンティーズム(心身の不調を抱えながら業務を行っている状態)が有意に改善していました。

歯科健診を導入すると経年的にオーラルケア行動(1日の歯みがき回数、フロス使用率、歯科通院率)が増加することは明らかにされてきました。

それを受けてオーラルケア行動の実践頻度の増加とプレゼンティーズムの関連性を検証するために、オーラルケア行動の実践頻度が増加した群と増加しなかった群(不変群)、減少した群とのプレゼンティーズムの変化が比較解析されました。

その結果、オーラルケア行動が増加した群では、そうでない群と比較して有意にプレゼンティーズムが改善していました。

睡眠や運動などの健康習慣は、プレゼンティーズムとの関連がすでに知られていますが、オーラルケア行動とその他の健康習慣、年齢、性別を考慮した条件でも有意な関連がありました。

そのことから、オーラルケア習慣の改善は、他の健康習慣の改善と同様に、生産性向上に寄与する可能性が示唆されました。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

歯科健診をきっかけとした口腔の健康が全身の健康に影響を与えることについては多くの企業が実施していることですが、歯科衛生に関わる企業は自社だけの成果に終わらず、外部にも発信し、協力を進めています。

その一つであるライオン株式会社は、株式会社日立製作所の日立健康管理センタと協働で、企業における歯科健診の導入と従業員の口腔・全身の健康に及ぼす影響について調査研究を行っています。

人間ドックと歯科健診をともに受診した日立グループの従業員(7763名)を対象に、問診データからオーラルケア行動と生産性との関連について解析されました。

オーラルケア行動に関する問診は、1日の歯みがき回数、フロス使用率、歯科通院率などで、このほかに唾液検査と口腔内カメラによる撮影が実施されています。

その結果、オーラルケア行動が増加した従業員は、生産性を評価する指標の一つであるプレゼンティーズム(心身の不調を抱えながら業務を行っている状態)が有意に改善していることがわかり、歯科健診をきっかけとしたオーラルケア行動変容が従業員の生産性に寄与することを発表しています。

歯科健診は現在は定期健康診断では義務付けられていませんが、2022年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)に、生涯を通じた歯科健診(国民皆歯科健診)の具体的な検討が盛り込まれるなど、歯科健診に注目が集まっています。

しかし、働く人の歯科健診は一部の危険を生じる職場で義務化されるだけで、積極的に歯科健診を取り入れる企業は少ないのが現状です。それは歯科健診を導入した場合の企業側のメリットが認識されていないことが多いからで、具体的な成果をあげた例として、ここで紹介している歯科健診の導入と従業員の口腔・全身の健康に及ぼす影響は高く評価されています。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

サプリメント(supplement)は、補助、補充、補完といった意味があります。通常の食事では不足する栄養素を補うものがサプリメントと呼ばれていますが、これは英語の「dietary supplement」を略したもので、dietaryは「食物の〜」という意味です。ということで、不足を補う栄養素という意味合いになります。

何が不足しているのかがわかれば、不足している成分(ビタミンやミネラルなど)を摂ればよいわけですが、具体的に何が不足しているかは食事内容をチェックしなければわかりません。そのチェックも、栄養の専門家のサポートによって行われない限りは、不足している成分を正確には知ることができず、不足している量を正確に補うことはできなくなります。

そのため、多くの種類のビタミン、ミネラルが含まれているマルチビタミン(という名称であってもミネラルも含まれている)を使うことが多くなっています。栄養素の種類は合っていたとしても、その量が不足している量を補うことができる状態とは限りません。

そこで、総合的に栄養素を補おうとするときには、栄養素の種類だけでなく、一定の量が含まれているものを選ぶことがすすめられます。栄養補助食品のカロリーメイト(ブロックタイプ)は1箱(400kcal)で一般の栄養摂取の3分の1の量が摂れるように配合されています。

他に栄養バランスがよいものとして、赤ちゃんが飲む粉ミルクがあげられます。これも成長に必要な栄養素の種類と分量が摂れるように調整されています。しかし、赤ちゃん用の粉ミルクは脂肪の含有量が多いことから、これに頼るのではなく、食事の脂肪量を考えつつ、不足する栄養素を補うためのサプリメント代わりに使うことがすすめられます。
〔健康情報流通コンサルタント 小林正人〕

サプリメント、健康食品は医薬品とは違って、診断なしに使うことができて、自力で健康状態を保ち、病気に傾いているような体調を元の状態に戻すことが期待されています。自分の意志と工夫で健康状態に導いていくというのは、“未病”の発想と共通するところがあります。

未病というと、健康と病気の間の状態で、元は東洋医学の発想でした。しかし、今では西洋医学でも研究が進められ、日本未病学会に参加する医師の多くは東洋医学の発想で西洋医学を実施しています。

日本未病学会は、単に健康と病気の間を未病とするだけでなく、自分の力で健康状態に戻ることができる状態としています。疾病の診断がされて、医薬品が使われたとしても初期段階では食事や運動、生活改善によって健康な状態に戻すことは可能です。

医療に完全に頼らなければならない状態になったら、これは病気とされて、もはや自力では健康状態に戻ることはできなくなります。まだ未病の状態にある段階で、少しでも早く対処して、病気にならないようにすること、健康な状態に戻ることができるようにするのが重要であり、そのために利用されるのがサプリメントの役割です。

例えば、血糖値が高くなりすぎて、このままでは糖尿病になるという人は、いわゆる予備群となります。糖尿病と診断されれば治療の対象となり、医薬品も使われます。糖尿病は食事療法、運動療法でも血糖値が下がらない人に医薬品が使われます。医薬品に頼りきりになるのではなく、自分の努力も必要で、その段階であれば健康な状態に戻ることができます。

糖尿病は合併症が発症しなければ重篤な状態にはなりません。糖尿病と診断されても、合併症がない状態は未病と考えることができます。医薬品を使っていても、糖尿病の血糖降下剤の作用機序がない小腸からのブドウ糖の吸収阻害をするギムネマ・シスベスタを使って、医薬品の効果を補助するという使い方もされます。

口腔の健康状態と労働生産性の関連の研究(安達奈穂子医学博士:東京医科歯科大学助教)は、歯科健診を毎年実施している日本の企業の従業員712人を対象に、質問票調査、歯科健診、一般健診・特定健診データを用いて実施されました。

自記式質問票では、全身的な健康では以下の質問をしています。

労働生産性:「歯の不具合による遅刻・早退・欠勤」の有無、プレゼンティーズム(心身の不調を抱えながら仕事をしている状態)として「歯の不具合により仕事に集中できなかったこと」の有無、主観的健康観、健康関連QOL、メンタルヘルス、職業性ストレス、食習慣

口腔の健康:口腔関連QOL、口腔の自己評価、口腔衛生週間、歯科受診行動(かかりつけ歯科医の有無、定期的・継続的メンテナンス受診の有無など)

社会経済要因:学歴、世帯収入、職種、婚姻の有無、子の有無など

歯科健診では、歯式(歯の位置や欠損状態を示すための書式)、う蝕を経験した歯の数、歯周組織の状態

定期健康診断・特定健康診査では、性別、年齢、身長、体重、腹囲、血圧、血液検査、問診、生活習慣(喫煙、飲酒、食習慣)などを聞いています。

その結果ですが、「口腔の不具合による遅刻・早退・欠勤」があったと回答した6.7%は、労働生産性低下の有無であるアウトカム(本質的な成果)では、喪失歯、う蝕を経験した歯の数、口腔関連QOLが低くなっていました。

「口腔の不具合で仕事に集中できなかったことがある」と回答した9.1%は、う歯、喪失歯、口腔関連QOLが低くなっていました。

この結果から、歯の不具合による遅刻・早退・欠勤の有無と口腔関連QOLが低いこと、口腔の不具合で仕事に集中できなかったことの有無と、う歯、う蝕を経験した歯の数が多いこと、口腔関連QOLが低いことの関連が示唆されました。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

歯の健康状態が保たれていると、心身の健康度も高まり、それが仕事の効率を高めることは以前から言われてきたことで、多くの事業所や研究者によって調査や分析が進められてきました。

歯と口腔の健康状態については、これまでは働き盛りの状態が高齢になったときの口腔の状態に影響を与えることが重要と考えられてきました。しかし、一般の労働者については歯科健診が義務化されていないこともあり、口腔保健が重視されてこなかったのは事実です。また、事業者によっては、口腔の健康が退職後の口腔の健康に影響を与えるという研究結果は、歯科健診を積極的に導入することに結びつかないのは仕方がないことではありました。

産業保健分野では、働く人の健康状態が労働生産性に影響を与えることは以前から知られてきたことで、その中に歯科健診を取り入れることの必要性も検討されるようになってきました。

一般の疾病では発症や治療のための欠勤、遅刻、早退は労働生産性を低下させる要因となっていましたが、最近では欠勤などには現れない疾病による仕事のパフォーマンスや集中力の低下の方が、むしろ労働生産性に大きく影響することがわかってきました。

しかし、口腔の健康状態と労働生産性の関連については、まだ研究途中であり、これからの分野とされてきたところがあります。

この口腔の健康状態と労働生産性との関連について研究発表した安達奈穂子医学博士(東京医科歯科大学助教)は、歯科の健康が全身の健康に影響することを裏付けることに取り組み、口腔の健康状態のうち、どれが大きな影響を与えるのかを明らかにしようとして、歯周病、う蝕(虫歯)、う蝕を経験した歯の数、口腔関連QOLと労働生産性に関連の調査に取り組みました。

その結果については、次回(健康デザイン10)で紹介します。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕

機能性表示食品は、試験によって機能性が確認されたら、それを消費者庁に届け出ることによって機能性を表示して販売することができます。機能性表示食品として認められていない健康食品が、機能性表示食品と同様の表示をしたら厳しく取り締まられます。

機能性表示食品として届け出るのは大変だからと、いろいろと頭を捻って商品を開発しています。その例としてよくあげられるのは“イタドリ”です。イタドリはタデ科ソバカズラ属の多年生植物で、山野や道端に生えている野草です。

イタドリにはオキシアントラキノン誘導体ポリゴニン、エモジンといった薬効成分が含まれ、消化不良、利尿、便秘の改善に効果があることは広く知られています。それと同時に痛みを取る効果があることから“痛取”という呼び名がついたと言われています。

といってもイタドリだけで関節痛や神経痛などを改善するには弱いということで、膝対策用の健康食品なら軟骨成分とともに加えて、イタドリ(痛取)のイメージで有効性を伝えるという、なかなかの存在です。

こういったことができない素材を使ったものは、商品名で工夫をすることになります。例えば、スッキリ茶というのは気分を爽快にするような成分が含まれたお茶なのに、スッキリがスリムになること、便通がよくなることというイメージで捉えられることがあります。

以前に大手の化粧品会社がホワイトローションというローションを出していたのですが、ローションが白くないのにホワイトの名称を使うと肌が白くなると勘違いさせることになるからと指摘されたことがあります。

これを受けて名称を変えるのかと思ったら、ローションの色を白くして名前を使い続けるという画期的な手法に出て、業界を驚かせたことがあります。
〔健康情報流通コンサルタント 小林正人〕