なんでも金で解決することはできないとは思いながらも、「地獄の沙汰も金次第」という思いをさせられることは何度もありました。金さえあればなんでも解決できるという感覚の経営者は少なくなくて、文句を言いたいなら金を持ってからにしろ、金を稼いできてからにしろ、と平気で言ったりします。
「無理が通れば道理が引っ込む」というのは不正がまかり通って、間違いが堂々と行われる世の中では正しいことが通用しなくなる、という意味ですが、“無理”は金や権力と言い換えられることは多くて、社長や会長が無茶をしていることはわかっていても、道理を引っ込めるしかないというのは、組織にいる人なら経験していることです。
地獄どころか“狂気の沙汰”と言えるようなことをしても平気な経営者でも、これまでの常識の範囲内であれば、乗り切れてきました。ところが、コロナ禍を経験して、多くの人の共感が得られないことをしていると、とんでもないことになることを知った人も少なくありません。
岡山に移住して関わった経営者に、「常識が引っくり返るようなことが起こっても対応できるように、自分の道理ばかり押し通すのはどうか」と話したときに、そんなことは起こるはずはないと言い切って、話を打ち切られました。
狂気の沙汰であっても金次第で乗り切れることはないと話していたことを、コロナ禍で大転換せざるを得ない状態になって、初めてわかったということを間接的に伝えてきたのですが、もう手遅れでした。もっと強く言っていれば、信頼していた社員も離れ、最も強みにしていた商品の販売権も失い、元の通りの売り上げを望むのは不可能という状況になる前に、なんとかなったのかと思うと、残念で仕方がありません。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)






