私の経歴を見て接触してきた方の中に、話している内容に関心を示しながらも、著名人の言葉でないから他人に通じない、有名になるための本を発行したほうがいいとアドバイスした人もいます。そして、本を書くのは大変だから手伝ってあげる、料金は……と切り出されたこともあります。
本を書くのが大変だということは、身に染みてわかっています。大手出版社の一角を占める会社でゴーストライターとして150冊、他の数社からも34冊を書いてきた経験があるのですから。
接触してきたコンサルタントの中には、やたらと著名人の書籍に書かれていることを引き合いに出して、自分の語っていることは正しいということを強調している方もいました。話を聞いているうちに、どこかで聞いた言葉だなと思っていたら、それに続く言葉が頭に浮かんできて、それを口にしました。あなたも読んだのですか、と聞かれましたが、まさか私がインタビューをして書いたとも言えないので、「だいたい、そんな流れでしょうね」と言葉を濁した記憶があります。
ゴーストライターは契約で、誰の代わりに書いたのかは言えないことになっています。150冊のうち私が許されているのは、初めに書いた「松下政経塾 塾長講話録」だけで、これは講話のテープを渡されて、そこから原稿に起こしたので、編集の延長みたいな仕事だったことからです。
ゴーストライターは本人が話したことを、そのまま書くわけではなくて、資料を受け取って、インタビューをして話を引き出す、一緒に中身を考えていくということもあり、中には私が想像を膨らませて書いたことが採用されたこともありました。
そんな苦労の末に世に出た本であることを知ってか知らずか、私が言葉にしたことを名言として持ち出されて、他人を感動させるために使われていると、そんなことをしてよいのかと考えさせられてしまいます。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)






