学習支援61 注意欠陥・多動性障害の動機づけ

注意欠陥・多動性障害がある子どもの場合には、動機づけが身につきにくく、学習面での影響が強く現れやすい傾向があります。その動機づけとしては内発、自律、向社会に分けて対応することが求められます。
1)内発
内発(intrinsic)は、本人の意思から発生するモチベーションで、好奇心や探究心、向上心などの内部的な要因から発生しています。一般的には注意欠陥・多動性障害は集中力がないように思われがちですが、集中できないわけではなくて、集中力を自分でコントロールできないという特性があります。自分の好きなこと、面白そうなことには高い集中力を示して没頭することで、スポーツや芸術などで発揮されやすい特性があります。この特性は、学習内容によっては定型発達の子どもよりも優れた能力を発揮することが可能となっています。
2)自律
自律(effortful)は、自分の意思でコントロールしている状態を指し、自らモチベーションを高め、目標に向かって行動することができます。目先の誘惑があっても、それに負けずに自生することができる能力を指していますが、注意欠陥・多動性障害の場合には自分の興味がないことにはまったく取り組まない特性があります。興味がないことであっても通常では今すべきことを示して学習させることができますが、それが注意欠陥・多動性障害では苦手であり、目先の誘惑に負けて、今すべきことを示しても向かわせることが難しくなっています。そのため、学習面では弱点となっています。
3)向社会
向社会(prosocial)は、他人のため、他人と一緒になってやろうとすることで、仲間と一緒に行動することが目的達成のモチベーション向上の一つとなっています。自分のためではなく、他人のため、社会のための取り組みは、他人との関わりが楽しく、ボランティアやチームで取り組む活動であり、他人の喜びであると同時に自分の喜びともなります。
注意欠陥・多動性障害の場合は、人懐っこしさがあり、知らない人にも物怖じしないところがあります。また、他人に注目されたり、他人に構ってほしい気持ちが強く、大勢で取り組むことに特に楽しさを感じています。この特性は、向社会の達成が目的・目標になると定型発達の子どもよりも精力的に関わり、グループで成果をあげようとする学習への取り組みでは優れた能力を発揮する結果となっています。