感染拡大から考える医療制度の壁

新型コロナウイルスの感染が急拡大する中で、これまで進まなかった変革が、あっという間に進められています。遠隔診療については、すでに診察を受けている患者に限ってだけ許可されるということから、初診の場合でも許可する流れに舵が切られました。このままでは医療崩壊につながるから、ということで、これまで方針を変えることがなかった厚生労働省が、日本医師会など医療現場の声に応える形で規制を緩めることとなったわけです。
医療崩壊というのは、今のところ使われているのは新型コロナウイルス感染で病院に来る患者、入院する患者の数に対してベッド数が不足していることを意味しているように感じられていますが、外来診察にも入院にも医師と看護師が必要です。重症の新型コロナウイルスとなると人工呼吸器なしに症状が抑えられない、人工心肺装置のECMOなしには生命維持ができないという状態で、これに対応するには多くの医師、看護師、技術者な必要になります。その人数が不足したのでは、いくら施設があっても崩壊してしまいます。
海外の新型コロナウイルス感染の報道の中で、日本は人口に対してベッド数が多いから、まだ医療崩壊はしない、軽度の患者でも入院できている、ということが伝えられていました。これを誇らしく語っていた医療関係者もいたのですが、ベッド数が多いということは、それだけ入院期間が長いことの裏返しです。アメリカでは日本の2倍以上の人口がいるのに、ベッド数は半分ほどしかありません。日本の平均入院日数は30日ほどですが、アメリカは6日以下です。アメリカでは月曜日に入院して金曜日に退院するということが普通になっています。
日本では金曜日に入院して月曜日から治療、金曜日に治療は終了して月曜日に主治医の許可によって退院ということが普通になっています。この余分と思われる入院期間で6日になります。こんな状況では、新型コロナウイルスのような感染が拡大したら国民皆保険制度が破綻するのではないかという不安が湧き上がってきます。すでに破綻しているという医師も少なくない中、これからの日本の医療制度を見直すタイミングになるのではないかと期待されているところです。