間違った言葉づかい(誤用)をしていることを指摘するのは、それほど誤用をしている人がいないときのことです。誤用しているほうが多くなってくると、そのまま受け入れようとすることは前回(日々修行178)で取り上げたテレビ業界に限らないことです。
とは言いながら、テレビ業界で働く人、その中で出世していく人は、間違った言葉を使うことが多くて、それをテレビ番組でも使う(使わせる)ことが多くなっています。
そのような間違いが広まっていくときに、わざとやっている場合と、正しいと信じてやっている場合があります。そのような状況で使われる言葉として例としてあげているのは「確信犯」です。
間違いを広めることは犯罪行為だといっているわけではないのですが、本人が正しいと思い込んで間違ったことをしているのは、よくあることです。そのような状況を表すのが「確信犯」という言葉で、正式な意味は「正しいと信じての行為」を指しています。
ところが、悪いことだと確信していながら行うことだと思い込んでいる人がテレビ業界をはじめとした大規模な業界で使われることが多くなっています。ひょっとすると自らが間違った意味のことをしているからかもしれないと思っているところです。
このような見方・考え方は、「うがった見方」と表現されることがあります。実際にテレビ番組の企画会議で私が的確な指摘をしたときに、かなり上のプロデューサーから「うがった見方をしている」と言われたことがあります。
それを受けて、現場の制作プロデューサーと打ち合わせをしたら、なんだか雰囲気が違っていました。聞いてみたところ、上のプロデューサーから「うがった見方」と言われた私の企画を「ひねくれた見方」と思い込んでいることがわかりました。
「うがった見方」は本質を見抜く見方のことだと話をして、上と下の受け止め方が同じなのか、違うのか確認をしてもらいました。結果としては、私のほうが正しくて、企画もスンナリと進めることができました。
このような結果になったのは「御の字」でした。この話を番組制作のプロダクション(下請け)に話したときに、「一応の納得しかしていないのか」と聞かれました。「御の字」は一応納得ではなくて、「とてもありがたい」という意味ですが、これもテレビ業界では間違いと気づかずに、よく使われています。
最後に書いておきたいのは「性癖」という言葉です。成功した人の性癖を引き出して、どのように成功に結びつくのか、という企画を出したときのことです。いろいろとある性癖をリストにして、それに合う人をピックアップしようということになりました。
このリストづくりはディレクターが担当したのですが、リストの内容を見て、「そう理解したか」と誤用の世界を感じてしまいました。そのディレクターは「性癖」のことを性的な癖だと理解していたのです。「性癖」は「性格の偏り」を表しています。
そういえば、間違った意味での「性癖」があるテレビマンも多いので、このような誤用が広まっているのも仕方がないのかと感じたものでした。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕






