「実質賃金が30年間上がっていない」という現状からの脱却を目指して賃上げが進められてきましたが、それに冷や水をかけるようなことになったのは、食料品の相次ぐ値上げとアメリカの関税政策でした。
そんな時代の変革時期に、こんなことを書いていてよいのかという迷いがなかったわけではないかもしれないのですが、「原稿料は、まったく上がっていない」ということから書き始めることにします。
長らくゴーストライターをやってきて、振り返ってみると35年間、原稿料の基本的な計算は変わっていません。35年前というと、これまで生きてきた中での半分の期間で、1990年はバブル景気最後の年でした。
バブル掲載の中にあっても、原稿料は上がることはなくて、バブル崩壊後も大きく下がることはありませんでした。
ライター仲間の中には、400字詰め原稿用紙1枚の原稿料が500円に下がった、と嘆いていた人もいました。表現は適切ではないかもしれませんが、「誰でも書ける」ような原稿の執筆料が下がっていくのは、景気のせいではありません。
私がゴーストライターとして担当してきたのは書籍で、大手出版社の一角を占める大手家電メーカーのグループ会社であったので、それなりの発行部数でした。
400字詰め原稿用紙に換算して300枚を書くと、本文が220ページ前後の単行本の分量となります。
その原稿料は、初めのうちは印税計算で、書籍の価格の3%でした。著者印税が10%で、その中の3%なので、1000円の書籍が1万部だと30万円になりました。
1枚が1000円の計算になり、1文字あたり2.5円という計算を編集者から示されました。そのときに言われたのが、「無駄に文字数、行数を増やさないでほしい」ということでした。
手書きの時代からワードプロセッサーの時代になると、A4用紙1枚分が40字の30行が初期の基本設定であったことから、1枚あたり1000円という原稿料が示されたことがあります。
これを400字詰め原稿用紙で計算すると3枚分(1200字)になるので、1文字あたり約0.8円になります。1枚が1200円でも1文字1円です。
これでは割が合わないので、従来の1冊分を書いたら30万円という作業料にしてもらっていました。
これも本来なら割に合わないことで、同じだけの分量を書くにも、内容によってかかる時間は大きく違ってきます。しかし、これでも他の書き手(自分の名前が出ないライター)よりも格段によい条件だったので、ゴーストライターは大手出版社で150冊、他の出版社で34冊を書くことになりました。
それが今では違ったギャラの計算になっています。それについては次回(日々修行248)に書かせてもらいます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕