日々修行256 規格外の個性と魅力

「規格外の野菜はおいしい」という認識について、前回(日々修行255)紹介しましたが、すべての規格外がおいしいというわけではないのは多くの人が承知していることです。これを理解するためのヒントとして、規格外の実例について書き進めていくことにします。

規格外野菜が増えたのは、品質の問題もあったものの、多くは流通が関係しています。例えば大根の話をすると、以前の大根は中央部が太い練馬大根や三浦大根が主で、箱には入れにくく、トラック輸送もしにくい形状でした。

それに対して一般に青首大根と呼ばれる品種は、細長くて抜きやすく、箱に入りやすい形状です。箱に入れて運ぶことができると積み上げることができて、大量に運ぶことができます。

箱に入れるときに、太さとともに条件となるのは長さで、一定の長さになったところで抜くことによって、運びやすく、販売するときに均一の形状のものを同じ価格で販売することができるようになるので、流通だけでなく販売にもメリットとなります。

青首大根の抜きやすいというのは、農業の高齢化に適した品種で、従来の中ぶとりの白首大根と比べると3〜5倍も抜きやすくなりました。この割合は、実際に引き抜くときの力を測定して求められました。

青首大根の“青”は上側の緑色の部分を指していて、それに対して従来の品種は白首大根と区別して呼ばれるようになりました。

緑色の青首は、登場したときから長くなる傾向があり(緑の部分が増えていった)、これも農業の高齢化が関係しています。青首の部分は日光を浴びている部分で、土から出ている部分が長くなり、ますます抜きやすくなりました。

大根に限らず、種は品種改良によって均一に育つようになったものの、必ずしも同じ長さになるわけではありません。土壌や栽培条件、気温などによって最も栄養価が高くなったときに箱のサイズと同じ長さになるということではないのです。

長さを一定にすると、本来の抜くべきタイミングと合わないことがあるのは当然のことです。まだ栄養価がピークになる前に抜くこともあれば、ピークを過ぎて低下が始まったときに抜くこともあります。

栄養価を優先させるのか、それとも長さを優先させるのか、という選択を迫られたときに、規格に合わせるというのが農業の現実です。容れ物に合わせるという画一的な育て方では栄養価だけでなく、おいしさにも影響が出てくるのは当然のことです。

最もおいしい野菜と画一化が一致しない現実があっても、画一的な野菜とは違った特徴があることを個性として認められないのは、何も野菜や農業に限ったことではありません。

規格外野菜の話は次回(日々修行257)の「教育の規格外」の前振りのようなもので、「規格外野菜=野菜の個性」と考えるのと同じように、子どもの発達のための対応に「規格外=個性」との発想で臨めないのか、という話に続きます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕