葬儀業界に関わったのは、私が生まれたところが母親の実家の寺院だったとか、仕事先の関係で葬式にスタッフとして出ることが多かったということよりも、一番大きかったのは知り合いの出版社の葬儀業界のウラを暴くような書籍の作成に参加したことです。
これは週刊誌に連載していた記事を、グループ(実際には3人)で書籍化した形で、まさに裏側が見えてしまう問題作でした。あまりの問題のために、一時期はメディアに何度も取り上げられたのですが、どこからかの圧力で、メディアが一斉に取り上げなくなったという不思議な体験もさせてもらいました。
葬儀業界ということで、病院で亡くなったときのことから葬式、火葬、骨壷から墓まで、広く現状を明らかにしていったのですが、そのときに知った葬儀会社の粗利70%というのは、今では“大きなお葬式”で60%、“小さなお葬式”だと50%を割るという状態になりました。
それでも「粗利50%は多すぎる」と書いた週刊誌もありましたが、葬式は立派な祭壇、花輪であっても消耗品となるのは棺桶や生花くらいのものです。祭壇や花輪などをもらっても使い道がないので、それは使い回しというのは当たり前のことです。
病院と葬儀会社は持ちつ持たれつという表現をすると語弊があるのは承知していますが、大きな病院になると1か月を約10日ごとに分けて、3つの葬儀会社を指定業者として入れているところがあります。
それぞれの会社から、何らかの見返りを期待して(実際には受けて)いるのですが、亡くなった方や家族は共済などを利用して葬儀費用を抑えようとすることがあります。
亡くなって、すぐに葬儀会社が病院に駆けつけてきて、家族が悲しんでいる間に霊安室で僧侶の枕経が始まるという手際がよい病院は少なくありません。まるで、亡くなるタイミングを先に知っている(知らせてもらっている)かのような対応です。
そして、看護師長が家族に対して、「ここまでやってもらえたのだから」という一言で、指定業者に葬儀を依頼するという例は、取材で知っただけでなく、実際に私も経験しました。直接の家族としてではなく、知人として枕経の場に立ち合ったときのことです。
こういったこともコロナ禍を経験して、家族葬や小さなお葬式を利用する人が増えてから徐々に減ってきました。
それに伴い、葬儀場の“稼ぎ”は、超高齢社会になって亡くなる人が増えてきているのに、大きくは増えていません。そのかわりというか、葬儀業界の売上の中で占める割合を増やしているのは火葬場です。
地方に住んでいると火葬場は公共施設という感覚があり、自治体の運営ということがほとんどで、その料金も高くはありません。全国の火葬場の約97%は公営です。ところが、住民が多い大都市部では民間の火葬場が多く、その料金が高騰しています。
このことについては、知人のジャーナリストの協力も得て知ることができたので、次回(日々修行267)に書かせてもらいます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕