日々修行269 高血圧の基準の変化?

日本人は血圧が高めの体質があり、血圧を下げることが健康長寿の重要ポイントとされてきたところがあります。高血圧の基準は、これまでにも何度か変更され、変更のたびに基準が下げられて、早めに治療を始めることが推奨されてきました。

高血圧の基準が初めて定められたのは1987年のことで、それほど前のことではありません。そのときの基準値は収縮期血圧(最高血圧)が180mmHg以上、拡張期血圧(最低血圧)が100mmHg以上でした。

これが1990年には収縮期血圧が160mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上となり、現在は収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上へと引き下げられました。

以前の基準ではギリギリ引っかからなかった人が、高血圧となることになって、これは医者と製薬会社の作戦ではないかと言われたこともありました。

高血圧は血圧が高い状態を指していて、治療が必要な状態になると“高血圧症”と呼ばれます。その高血圧症の基準が変わった、以前とは逆に基準が高められたという話が広まっていて、その真偽が質問される機会が増えました。

そのような質問が出るようになったのは最近のことで、2024年の4月1日に発表された厚生労働省の「特定健診における受診勧奨判定値」の中で、収縮期血圧が160mmHg以上、拡張期血圧が100mmHg以上という数値が示されたことです。

これは基準が緩やかになったわけではなくて、「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」で、すぐに医療機関を受診して、治療を始めるように推奨される数値が新たに加わったことによるものです。

従来からの収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上という高血圧の基準が変わったわけではなくて、あくまで特定健診(いわゆるメタボ健診)での話です。

一般の人の勘違いだけでなく、中には医師でも勘違いしている人がいて、「高血圧の基準が変わった」「国は何を考えているのか」と発言(講演やネットなど)していることもあって、これが混乱を引き起こす要因にもなっています。

高い値が示された人は、生活習慣病を改善する努力をして、それでも数値が改善しないなら医療機関を受診するように指導されるのは、収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上であるのは変わりがありません。

このような状況もあって、日本高血圧学会は「特定健診における受診勧奨判定値についての正しい理解を」という通知文で注意を呼びかけています。

そのようなことが認識されるようになった一方で、肝心なことが抜けた報道がされています。どの年齢でも同じ基準ではなくて、また家庭で測定する血圧は正常値の範囲が異なっています。

家庭血圧の正常範囲は収縮期血圧が125mmHg未満、拡張期血圧が75mmHg未満とされています。これは75歳未満の人の目安で、若者から前期高齢者も含んでいます。75歳以上の後期高齢者では収縮期血圧が135mmHg未満、拡張期血圧が85mmHg未満が目安とされています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕