日々修行274 「右向け左」の発想

号令に従って全員が同じ方向を向くことは「右向け右」と言い表されています。これは頭を動かして右側を見るということではなくて、身体全体を右に90度変えることを指示されています。

右でも左でも構わないとは思うのですが、同じ方向を向いて、その後には何をするかというと同じ方向に向かって進んでいきます。

これは軍隊や警察の規律訓練や体育のときの整列行進だけでなくて、言葉は違っても同じ方向を見て、同じように従わせるときに用いられる言葉であり、発想でもあります。

目線を向けて見ることについては、交通安全では「右見て左見て、もう一度右を見て」ということが言われます。ただ見るだけではなくて、道路を渡るときのルールとされていて、幼稚園や保育園、小学校に入ったときには初めのうちに習うことです。

これは車両が左側通行の日本ならでは、の習慣です。右側から来る車両が一番危険であるので、それを確認するために左を見る、そして再び右を見て安全を確認するという説明がされています。

これが道の横断ではなくて、さまざまな世界の安全対策では「右向け左」が用いられています。全員が右を見ているときに、それに従って同じ方向を見ていたのでは全体像を見逃すことがあり、危険に気づかないことにもなります。

そこで「右向け右」の状況になったときに、「右向け左」の発想をもって、見落としがないか、全員で同じ方向を見ていてよいのかという慎重さを持って行動することを呼びかける用語となっています。

これは企画立案でも重視されることで、論議を重ねていくことで全員の方向性が一致してきたときに、本当にそれでよいのか、その場の雰囲気に流されて偏った判断をしていないかという確認に意味でも「右向け左」が使われます。

全員が「右向け右」になるのは、そもそも左(だけでなく全方向)を見て基本となる提案をしなかったことが後々に問題となることも多いだけに、「右向け左」の発想で企画から会議、最終決断まで取り組む人が一人くらいいてもよいという考えがあります。

このことを気づかせてくれたのは、書籍の執筆が仕事だったときの編集担当者の言葉で、集中するほど意識を多方面に向けておく必要があり、それがヒット作の秘訣ということを話してくれました。

その言葉は、何事を考えるときにも頭の中にはあって、発達障害の特性がある人の中でも多動性の特性がある人には「右向け左」の役割を期待することがあります。発達障害では注意欠陥・多動性障害と呼ばれていて、自閉症スペクトラム障害と並ぶ発現率が多い状態を指すときに使われています。

注意欠陥というと集中できない困った状態のような印象も抱かれがちですが、多くのことに目を向けているからこそ、考えが偏らないという重要な特性であると考えています。

そのような特性を活かすための場作りも重要との考えで、学びに関わる仕事を進めているところです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕