デジタル広報が主流になってきた時代に、あえて紙のリリースを使ったアナログ広報を続けているのは、今もアナログ人間が多いということではなくて、かえって目新しい広報、扱いやすい広報として見てくれるデジタル世代が数多く存在しているからです。
前回(日々修行285)で紹介した納豆の全国広報が、それ以降の食品の全国広報のベースとなり、それが食品業界にも全国メディアにも重宝がられたのは。地道な紙を使っての“超アナログ広報”が活かされた形です。
その目的は、多くのテレビ番組で納豆の健康効果が繰り返し放送されて、納豆の売り上げをV字回復させることでした。その目的があげられたのは、納豆の売り上げが年々減少していたからで、大手広告代理店の仕掛けがあっても、前年よりも上回ることがなかったからです。
納豆広報のメディア向けのリリースは、毎月1回、プリントしたものを各メディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)の各地の本社と支社に送っていましたが、健康効果を取り上げてもらうのに基本的な情報と季節に応じた情報を提供していました。
情報提供のタイミングは、テレビ放送される想定の2か月前で、この段階から企画会議が行われることは事前に察知していました。その情報も、いきなり送るのではなく、1年を通じて「こんなリリースが送られてきますよ」という事前情報を伝えるために、1年分のネタを簡単にまとめた資料を先に送っていました。
これには別の目的もあって、いつも同じような納豆の健康効果の基本となる栄養素や成分についてリリースに載せているとリリースの分量が多くなって、見てもらいにくくなることを考えてのことです。
「納豆の健康効果事典」のようなものを載せておくと、納豆に関するテレビや雑誌などの企画を考えてもらうときに引いてもらえるようになります。リリースを見て、企画を考える担当者は入れ替わることがあるので、まとめた資料を渡してもらって、メディア内の理解を進めてもらいたいという狙いもありました。
毎月のリリースは、これを新聞や雑誌の小さな記事にする担当者がアルバイトであっても、記事にしやすい書き方を心がけました。これは以前に書いた「新聞記事→雑誌記事→テレビ番組」の流れの中で、まずは小さくてもよいので新聞の記事にしてもらうことを考えてのことです。
そこで新聞社や雑誌社向けには、全体のリリースのほかに、同じ内容を短くまとめた2種類のリリースもつけていました。これを参考にして、楽に記事にしてもらおうという考えで、これは思ったとおりの結果となりました。
東京には、全国各地のメディアの支社があり、似たようなところに存在していました。これは大手広告代理店の近くで、広告を取るためであり、広告と絡めた記事を作るのは東京支社の役割でした。
そこで、東京の支社には、リリースの追加資料を届けるという形で、直接訪問して、最新情報を提供して回っていました。これは東京でなければできなかったことです。
そして、仕上げはFAXによる情報発信で、FAXにはメール発信よりも見てもらいやすいというアナログならではの利点があります。FAX情報は、他の記事の扱い、テレビ番組で取り上げられる日時と簡単な内容などで、これを見れば、情報が重ならないで済むということで、重宝がられた情報発信の形ではありました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕