国のお役所の中には、調査と情報を扱っているところがあります。調査が中心であったときには、アメリカの組織の日本版という雰囲気から、「Central Intelligence Agency」(略してCIA)と呼ばれることもありました。
今では調査と情報の両方を扱う組織になり、日本の部署名では情報が調査よりも先に書かれていて、英語表記では「Intelligence and Research Office」となりました。
IntelligenceもResearchも情報を意味するので、情報調査というならInformation and ResearchもしくはIntelligenceのほうが相応しい感じがします。
部署の説明文を見ると、「情報の収集・分析、そのための調査」となっています。それなのにIntelligenceを使っているのは、調査の裏側に“諜報”の意味を持たせているように感じさせられます。
この部署と、どのように関わってきたかということは書かない(書きたくない? 書けない!)ことにして話を先に進めていきますが、調査が主だったときには、声がかかることはなくて、情報が加わってから情報の担当と付き合うことになりました。
当時は健康科学情報センターの名称でメディア対応をしていたものの、この分野の情報の収集と発信ではなくて、国民的なムードづくりが期待されていました。
ムードづくりということでは、テレビ草創期にアメリカのホームドラマが頻繁に放送されていたのはアメリカの商品の購入を促すためのムードづくりで、世界的に有名な清涼飲料水は文化やファッションとしての情報発信でした。
納豆、豆腐、豆乳の全国広報を担わせてもらったのは、材料である大豆の健康効果の普及が主であったものの、輸入食品の農薬や遺伝子組み替えへの国民的ムードの報告転換の情報という側面もなかったわけではありません。
米の問題で言うと、“平成の米騒動”では輸入される米の安全性の意識を変えるところまではいかなかったのですが、令和の米騒動では価格とともに品質が着目されました。
米は国内自給率が96%と最も輸入割合が少なく、不足した分を輸入するという選択肢の話題は少数派でした。
価格高騰が最大の関心事で、価格を下げるために古古米、古古古米、場合によっては古古古古米も受け入れるというムードにもなりました。不足と価格高騰が米離れにつながらないようにすること、米農家を守るということが重視された情報発信も進められました。
質が低くても安い食品を受け入れる、そのために伝統的な生産が落ちていくというのは、食料を通じた国際戦略の一つで、安い食品が安定的に入ってこなくなったときに食品を持っている国の言いなりになるしかない、というのが世界で見られてきたことです。
私たちが手掛けてきた食品の広報戦略が、よくない手法として使われることがないように、情報の役割を再認識して、今回の米騒動の国民的ムードを見続けていくこととしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕