大学生のときのこと、地元の農業高校の卒業生が誰も農業に就業しなかったというニュースが流れて、このままでは農家が、中でも米農家が廃れてしまうのではないかと思ったことがあります。
私は米国(アメリカのことではなくて“こめぐに”)の出身で、高校3年生のときに地元選出の国会議員が総理大臣に就任したこともあって、米政策が大きく好転するのではないかという期待を抱いたこともありました。
しかし、その国会議員の東京の私邸に出入りするようになって、減反政策は何も変わらないことを知りました。
また、大学を卒業してから、幼いときの隣の家のお兄ちゃんが全国農業協同組合中央会にいたので、話を聞く機会がありました。そのときには、なぜ大規模農家が増えていかないのか、その理由について知りました。
このことは“令和の米騒動”に発した農業改革の話にもつながっていることで、テレビやネットで取り上げられるたびに、ピントが合っていないことを感じています。
なぜ大規模化が進まないのか、という理由に、いまだに日本は国土が狭くて農地が少ないので機械化、大規模化ができないという説明がされています。そのようなことはなくて、大規模化のための農業機械(トラクター、コンバイン、田植え機など)の支援は行われてきました。
米は農協が引き取ってくれなければ売れないという時代から、自由に流通できるように変化してきました。これによって、農協の指導どおりの種類と量の農薬を使わないと「一粒も」買ってもらえないというようなことはなくなりました。
それなのに小規模農業のままで、米農家は家族経営が96%という状況が続いているのかというと、米農家が“票田”になっているからです。票田は、選挙の候補者に多数の得票が見込まれる地域のことで、田んぼが多い地域、つまり農民の票が多い地域を指しています。
小規模では生産効率が悪いことは、農業政策に携わる人だけでなく、誰でもと言ったら言い過ぎかもしれないものの、場合によっては子どもでも知っていることです。
「小規模=票数」ということで、大規模にならないほうが獲得票数が見込めるという状況が昔も今も続いているということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕