日々修行296 農業改革の抵抗勢力

「小規模=票数」という日本の農業が抱える政治的なところに触れた前回(日々修行295)に続いて、そのような発想のまま続けていけるのか、すでに発想の崩壊が始まっているのではないかということを書いていきます。

その根拠となっているのは農業の高齢化です。日本の高齢化は進むだけ進んで、今や超高齢社会となり、2040年には高齢化率は35%を超えるとされています。

2040年は、高齢化の進展と人口減少による社会構造の大変化が起こる年と考えられていて、全労働人口の20%以上が医療と福祉・介護で働かないと日本が破綻するという厳しい社会が到来する時代です。

2025年は、団塊の世代の全員が75歳以上の後期高齢者となる年です。

「昔々あるところに、お爺さんとお婆さんがいました」という時代から、「あらゆるところにお爺さんとお婆さんがいます」という時代になり、その先駆けが農業が盛んな地域であることは多くの人が気づいています。

現状の農家の平均年齢は68.4歳で、米農家の平均年齢は70歳を超えています。2025年から定年退職年齢が65歳まで引き上げられ、本人が希望すれば70歳まで雇うことが努力義務化されました。

その年齢に達していて、さらに5年後には米農家の平均年齢は後期高齢者の年齢に達することになります。2030年には米農家は後期高齢者がほとんどとなりかねない状況です。

その後期高齢者が米の生産の多くの部分を支える(家族経営が96%)という状況では、そう遠くない時期に“瑞穂の国”の伝統が崩れ去ることも考えて、政策に着手しなければならないはずです。

それなのに農業改革の“抵抗勢力”が幅を利かせている状態といえます。

2001年の自民党総裁選挙のときに、小泉純一郎(後の総理大臣)が「改革に抵抗する勢力」と表現した、それと同じくらいのことがないと、期待するような結果は望めないというムードにもなっています。

今回の米騒動は、米不足と価格高騰に対応するために、政府備蓄米を大放出する、場合によっては倉庫を空っぽにしても価格を下げるという勢いで進められました。本当に空っぽになったときに、これまで以上の米不足になることは、安い米を買うために並ぶときには想像がつかないことかもしれません。

気候変動が激しいことだけでなくて、稲を食べる害獣のヌートリアが西日本から静岡まで広がっていること、米の質を大きく低下させるカメムシが大量発生していることを論議から外して米の質と量だけを語る風潮も抵抗勢力の一つと考えたくなるくらいです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕