日々修行297 発達障害の表現の疑問

発達障害は、広く通じる共通の用語となっていても、共通の認識が得られているかというと、それは否定的に見るしかない状況です。

子どもの10人に1人が発達障害という状況で、発達障害の特性は生涯にわたって続くという事実も、あまり理解されていません。

発達障害には差別的な感覚もあって別の呼び方をしようという動きがあっても、医学用語でも法律用語でもあって、障害の“害”をひらがなにして「障がい」とすることくらいで止まっていた時期があります。

発達障害(developmental disorder)は、以前から使われてきたものの、発達障害者支援法の施行(2005年)によって確定的に使われるようになりました。それが今では 神経発達症(Neurodevelopmental disorder)が医学界では使われるようになりました。

神経発達症は知的発達症(知的障害)を含めていますが、発達障害では知的発達症(知的障害)が含まれないなどの違いがあります。

障害ではなくて症状という感覚で説明されることが多いようですが、呼び方が違っても状態に違いはなく、対応にも違いがないという考え方が主流となっています。

実際に発達障害児(神経発達症児?)の支援に関わっている方の多く(私も含めて)は、呼び名を変えることで解決されるとは思っていないはずです。

3大発達障害と呼ばれる自閉症スペクトラム障害は「自閉スペクトラム症」と呼び替えられています。英語表記は、ともに「Autism spectrum disorder:ASD」です。

注意欠陥・多動性障害は「注意欠如多動症」と呼び替えられていて、ともに英語表記は「Attention-Deficit Hyperactivity disorder:ADHD」です。

学習障害はLD(Learning Disorder)と表示されますが、言い換えの「局所性学習症」は英語表記ではSLD(Specific Learning Disorder)と部分的な違いがあります。

これまで、私たちは発達障害を使い、神経発達症は使ってきていませんでした。

また、3大発達障害についても自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害、学習障害を使ってきました。

障害という用語を使わない傾向があり、徐々に自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、局所性学習症が広まってきていることも承知しています。発達障害の特性がある子どもの保護者には、これらの用語は特に使わないようにする発達障害児支援施設が増えてきています。

しかし、言葉を変えることによって、本質が見えなくなって、それによって対応を間違うようなことがないように、あえて旧来の用語を使っています。発達障害の脳の機能の障害であって、これを認めて、改善に取り組むことが重要だと考えています。

また、障害を「障がい」と表示することで、障害の意味合いが伝わらないことも懸念しています。障害があることは事実であっても、周囲の理解と支援が足りないために障害が改善されないまま続くことになります。

例えば、車椅子を使っている人が、2階に上がることができないのは、それを支援する人、支援する設備がないからであって、それがあれば障害を感じることは少なくなります。障害がある人を障害者にしているのは周囲の対応という考え方です。

このことは発達障害の支援に当たる人には、基本的な認識として話をさせてもらっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕