日々修行298 スペクトラムの基準

スペクトラム(Spectrum)というのは連続体や分布範囲のことで、この連載コラム(日々修行)でも何度か出てきています。その多くは発達障害の一つの自閉症スペクトラム障害に関連して書いています。

自閉症スペクトラム障害は、自閉スペクトラム症と呼ばれるようにもなっていますが、「スペクトラム」の部分は変わりがありません、スペクトラムは一つの状態ではなくて、連続した状態を指しています。

自閉の特性は0%か100%かという大別されるものではなくて、1〜100%までの範囲で分布しています。例えば、自閉の特性が10%で、それ以外の状態が90%なら特性が判別されることは少なくて、自閉の特性が60%であれば判別されるという感じです。

判別の基準としては、①社会的コミュニケーションや社会的相互作用の持続的な欠陥、②興味が限定的、行動が反復的といったことがあり、日常的な習慣を阻害されると強い不安を感じるということがあげられます。

しかし、程度には個人差があって、すべての人の状態を把握するだけの裏付けが取れているのかというと、そうではありません。また、判別する基準が合っていたとしても、それだけで完全に判断できるものではありません。

神経的な状態は、精神的な状態に左右されることが多くて、さらに環境や人間関係などによっても変化するものです。検査を受けたときに基準を超えていたとしても、別の日には違う結果になるということは往々にしてみられることです。

その時々で違うというだけではなくて、仕事によって、そこで働く周りの人などによって変化してくるもので、発達障害が百人百様では済まずに“千差万別”と言われる所以が、ここにあります。

従来は発達障害の診断は、子どもも大人も変わらないところがあったのですが、2012年に発達障害児を支援する放課後等デイサービスは始まり、さまざまな状態の報告が相次ぐ中、2013年に小児科学・児童精神科学の分野において発達障害の診断基準が変更されました。

自閉症に限らず、発達障害をスペクトラム(症状の程度に強弱のある連続体)と考え、これまで障害とみなされなかった軽症例も診断されるようになりました。

軽症例であっても生活上の困難があり、適切に支援しなければ二次障害をきたす恐れがあるために、支援対象とすべきとの観点もあって支援対象者が拡がったという事実があります。

自閉症スペクトラム障害の名称には、スペクトラムが入っていますが、それ以外の注意欠陥・多動性障害にも学習障害にもスペクトラムの観点が加わったことから、ここからが発達障害という判別も、これをすれば改善できるという経験則も通じない状態が増えてきました。

岡山に移住して8年になり、その間の多くを発達障害児の支援をする中で、特にスペクトラムへの対応に注意しなければならないと感じさせられたのは、学習障害です。

単に成績だけでなく、テストの点数で判断するという通常の方法では、学習障害の状態もわからず、改善の方法も何が合致しているのかも決定づけることはできません。

学習障害は学ぶための基本的な機能にも知的能力にも問題がないのに、学習に困難を生じている状態であるだけに、何が引っかかっているのか、どこを改善すればよいのか、改善支援をする側も線引きをすることができないというのが悩みであり、その改善に取り組むことには意義を強く感じているところでもあります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕