機能性表示食品は、健康食品業界に関わる人には悲願の制度でした。
機能性表示食品は、いわゆる健康食品の中でも、医薬品や特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品(ビタミンやミネラル、脂肪酸の栄養機能が確認されている成分)と同様ではないものの、一定の機能性(効能効果)を表示して販売できる、それまでの健康食品と比べたら段違いに入りやすい商品です。
健康食品でさえ、臨床栄養の世界からは“敵”とみなされていた時代がありました。いくら病院の管理栄養士が栄養指導をしても「血糖値を下げる健康食品を摂っているから」と言って、指示に従わない(場合によっては無視する)ということが起こっていました。
機能性食事食品は、一定の研究成果を示すことによって、機能性(効能効果よりも弱めの表現)を表示して販売できるものだけに、臨床栄養の世界で働く人にとっては、より強い敵が現れたようなものでした。
機能性表示食品は、血圧が低下する、血糖値が低下するという機能性を表示して販売できるものではあるのですが、有効性が高いということは、健康被害が起こる可能性があるということでもあります。
健康食品は食品であるので、医薬品のような健康被害は起こらないという認識もされがちですが、そんなことはありません。健康効果があるということは、医薬品に近付いているということで、医薬品に近い健康被害が起こる可能性があるということです。
そのことについては、あえて語らないようにしているのは健康食品業界だけではなくて、本来なら規制する側の“お役人”にも共通していることです。
実際に、どのような健康被害が起こるのかというと、その詳細については健康食品の世界事典とも呼ばれる「ナチュラルメディシン・データベース」に掲載されています。このデータベースは、英語圏の世界共通資料ですが、健康被害とともに健康食品の健康被害と、医薬品の健康被害の両方が掲載されています。
ともに有効性が確認されていて、ともにリスクもあるということで、組み合わせによっては思いもしない健康被害が起こることになります。その「思いもしない」ことを科学的に分析して、あらかじめ示しているのが英語圏で採用されている「ナチュラルメディシン・データベース」(natural medicine database)です。
「ナチュラルメディシン・データベース」の優れているところは、健康食品の成分と医薬品の相互作用について世界中の研究成果を集めて明らかにしていることです。アメリカでは相互作用は医薬品を減らすために活用されています。
アメリカの医療制度は定額制度で、同じ診断がされたら、医療機関が得ることができる医療費は同額です。どんな医薬品を使っても医療行為を行っても決められた金額しか得ることができないということです。
それに対して我が国では、“出来高払い”制度なので、医薬品を使うほど収益が得られるということであり、それは支払う人にとってはマイナスにもなる制度です。
「ナチュラルメディシン・データベース」が始まった元々の目的は医薬品を減らすことだったはずで、海外では、のような目的で使用されています。ところが、日本では医師が健康食品を使わないように患者に言うために使われています。
機能性表示食品は、一般の健康食品よりも機能性が高いということで、リスクも高いと言うことができます。
機能性表示食品に関しては制度設計には加わっていないものの、制度が始まった2015年から東京から岡山に移住するまでの2年間、その運用についての委員会の委員を務めてきました。
機能性表示食品は、敵なのか味方なのかという、お題に関して言えば、まだ結論は出ていないところですが、医薬品と健康食品のリスクを下げるために、クスリが“リスク”にならないようにするために「ナチュラルメディシン・データベース」を扱うことが重要だと考えているところです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕