私の出身が臨床栄養学のH.D.S.研究所だと言って通じるのは医療関係者くらいで、それは初代の所長の山本辰芳先生(管理栄養士)が臨床栄養の世界で今でも語り継がれる業績を上げてきたおかげかもしれません。
その業績の中には、栄養指導をして保険点数がつくのは医療機関の管理栄養士だけという画期的な制度の構築があるのですが、その制度のことも一般には広く知られていないくらいで、臨床栄養という言葉も、まだまだ一般には通じにくいところがあります。
臨床栄養と簡単に説明するときに、病院給食のことだと紹介されることもあるのですが、それを納得しているわけではありません。公共の場で主催者や司会者に反論するわけにはいかないのでスルーさせてはいるものの、「臨床栄養≠病院給食」という、ややこしい説明が必要になってくるからです。
確かに臨床栄養に関わる人が主に活躍しているのは病院で、それを象徴する仕事は給食です。入院患者に食事を提供することは病院給食と一般には認識されています。場合によっては、医師や看護師などの医療関係者であっても「臨床栄養=病院給食」と捉えて、中には「病院給食のことをカッコよく言い換えているだけ」と言う方までいます。
病院給食のことを英語で表示している医療機関があって、そこに書かれていたのは「hospital lunch」でした。病院で食べるランチといった意味合いですが、他にも「hospital food」「hospital meals」とされることもあります。
これは病院内で食事をする患者を主とした考えからくるものであって、その病院給食を提供する側は「hospital foodservice」と表現されています。
しかし、臨床栄養の立場で食事を提供している人たちは栄養管理という意識であり、これを英語で表現するとしたら「nutrition management」となるかもしれません。
前々回(日々修行325)、病院栄養管理について、私が若いときに所属していたH.D.S.研究所は「Hospital Diet System」の略だと紹介しましたが、その流れからすると病院栄養管理は「hospital diet management」と表現するのがよさそうです。
ここまで病院を例として書いてきましたが、臨床栄養は何も病院だけで行うものではなくて、退院した人が再発しないようにする食事の指導も、さらには生活習慣病などを発症させないように心がける食事の指導も臨床栄養の「diet management」です。
臨床栄養学は学問的にいうと、病気の原因や進行に栄養摂取が、どのように関わっているかを学ぶ専門分野で、栄養士だけが担うわけではありません。医師も食事を作る調理師(家庭では家族)も一緒になって知り、実践していくべきものです。
今回のお題の「臨床栄養≠病院給食」は、そのような考えがあって決めました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕