今回のお題は、前々回(日々修行361)のお題と同じ読み方ではあるのですが、そのときに使ったのは「恩送り」で、今回は「ON送り」です。恩をONと書き換えたのは、前回(日々修行362)の「ONをOFFで返す」を引きずってのことです。
スイッチONしたことが、相手にOFFされて、途中で終わってしまう悲しい状況を「ONをOFFで返す」という諺(ことわざ)をもじった言葉で伝えています。
「恩送り」は恩返しではなくて、受けた恩を次へとつなげていくことを指しています。恩返しであれば、どのような恩を受けたのか、その恩の大きさをどの程度だと感じているのかによって、返す内容と返すべき程度が変わってきます。
恩人との関係性にもよるものの、受けた恩の半分程度であっても“充分に恩を返してもらった”と感じてもらうことは可能です。そして、恩を返した側としても安心感というか満足感と言うべきか、これ以上の恩返し、何度も続くような恩返しをしなくてもよいということになるかもしれません。
ところが、「恩送り」は恩人とは異なる人に対して、恩の深さや有り難さを伝えていくことであるので、これでよいと言う限度(限界点)は存在していません。それこそ恩を送る人の心(気持ち次第)のところがあります。
こういった話をさせてもらった後に、恩をONに書き換えて、そのプラスのイメージのONが、いつまで続くのだろうと考えると、前々回の例としてあげたような食堂などで1人分を食べた人が2人分の金額を支払って、1人分を必要としている人のために使ってほしいということは途中で途切れてしまう可能性があります。
ここで、もう一つ引き合いとして出すのは、「人は二度死ぬ」という言葉です。これは一度目は生命体としての死、二度目は存在が忘れられることで、その存在が忘れられたときを二度死ぬと表現しています。
ということは、亡くなっても、その存在が忘れられなければ二度目の死はないというわけです。誰もが感激する金言(価値の高い言葉、格言)は、初めのうちこそ誰の言葉なのかは伝えられていても、時代を経るたびに忘れられていって、金言だけが残るということがあります。
その意味や発想、思想が受け継がれていって、誰が言ったことか、始めたことかわからなくなっても続いていく、結果が出続けるということにもなります。
例えば、江戸時代から今も続いている河川の土手の桜並木は徳川吉宗(暴れん坊将軍)が作らせたものですが、これは土木の費用をかけずに住民に踏み固めてもらうことが目的であったと伝えられています。これによって、桜を愛でに家族連れで出掛けて、日本の四季を感じて、それを日常に活かしていくという文化は途切れてはいません。
徳川家康の参謀であった天海僧正は、江戸が国の中心であり続けられるように四神相応に合わせて神社と寺院を配置するという江戸設計を行い、この配置の通りに住民が歩くことで願いが継続する呪術をかけたのが七福神巡りとされています。
住民が観光と信仰の行事として続けるうちは呪術が続くということで、江戸開府(1603年)から420年以上も国の中心となっています。
これをもって、「三度は死ぬことはない」という話をさせてもらっていますが、そのためには永遠に続くONを構築することが重要であり、どんな結果になるのか楽しみにすることができる仕組みづくりをしたいと考えています。
できることなら、私がやってきた健康づくりの研究、そのための組織づくりが活かせるものであってほしいと願っています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕