時間塾34 国に預けている金の損益分岐点

「国に預けている金」というと、年金のことを思い浮かべる人が多いようですが、これは預けているわけではないことを、国民全員が承知しているということが前提となっています。

公的年金制度は、現役世代が支払った保険料を高齢者の年金給付に充てるもので、いわば仕送りのようなものを想定しています。自分が出した金が積み立てられて、それを一定の年齢になったら受け取れるという制度ではありません。

しかし、払ったものを取り戻すという感覚の人は依然として多くて(そちらの考えをする人のほうが多い?)、支払った金額よりも少ない給付しか受けられないと損をした、支払った金額よりも多く受け取ったら得をしたということを口にする人は相変わらず多く存在しています。

こんな考え方になるのも“損益分岐点”という用語を使って説明しているメディアやネット情報のせいで、もちろん給付金額にもよるものの、年金受給年齢を引き上げると全体的に受け取れる金額が増えるというのは事実です。

損益分岐点は総支払額と総受給額が逆転する年齢を指しています。その分岐点の年齢は、60歳繰り上げなら約80歳10か月、75歳繰り下げなら約86歳11か月が目安となります。

この年齢に達する前に亡くなると繰り上げたほうが総額は多くなり、その年齢を超えて長生きすれば繰り下げたほうが総額は多くなります。こういった説明をされると、どうしても損得の感覚になりがちです。

65歳の受給を70歳の受給にすると、得をするのは81歳からとなり、ちょうど男性の平均寿命と同じくらいになります。なんだか長生きすることがギャンブルのような感覚で、これは「自分の金を預けているだけ」という感覚と重なってきてします。
〔セカンドステージ連盟 理事長:小林正人〕