業苦楽26 こだわりの自業自得

会うたびにネクタイが違っている医師がいて、「いったい何本持っているのか」と言われるのを喜びにしていました。そのネクタイも似たような柄のものはなくて、どれも高級品で、目で見てわかる“稼いでいる証拠”のようなものでした。

「数えてみたら200本を超えていた」ということを言っていたのですが、リストを作って、同じメインの人と会うときには、前と同じネクタイにならないようにしていた、ということを聞いて、独特の“こだわり”を感じたものです。

しかし、これでは満足できなかったのか、このことは本人からも聞いたことがあるのですが、高級ネクタイであっても、その価値がわからない人も多いことから、わかりやすい品物に金をかけるようになりました。それは腕時計でした。

以前は「時計なんてものは時間がわかればいい」とか「宝飾品の時計を日本人が時間を知るためのものに変えた」ということを言っていました。後者の意味は、安物のデジタル時計のことを指していて、Apple Watchのことではありません。

その医師が選んだのは、世界7大時計ブランドで、そのうち5種類のブランドを持っていました。超高級腕時計は重量感があって(ありすぎて)、多機能すぎて、忙しい職業の人が使いこなせるのか、というような代物でした。

最終的には20本になっていて、これを毎日付け替えるということではなくて、会合などで一緒になる人の中で一番高い(2番じゃダメ?)時計をつけることにこだわり、主だった人の超高級時計の価格をチェックしていました。

パーティなどではバッグに医師が持っている最高級の時計を忍ばせておいた、ということを聞き、これを取り出したのは2回あった、ということも聞きました。

コロナ禍のときには会合が少なくなり、オンラインで会議も増えて、腕時計をつけることがなくなった時期にもあまり使わない時計を手放すこともなく、今に続いている、との話を最近、オンラインでの打ち合わせのときに聞きました。

私よりも年上(70代半ば)で、会合に出ることも少なくなったのに、今も超高級腕時計はケースの中で動き続けているとのことでした。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕