業苦楽33 貧しい人への托鉢

お釈迦さまが托鉢をする弟子に、裕福な人ではなく、貧しい人のところを回るように説いたという話が今に伝えられています。

普通に考えれば、裕福な人にとっては托鉢に布施をする額は大きな負担ではないので出してもらいやすいようですが、それでは修行にならないということを伝えています。

これは楽をしてはいけない、苦労をすることによって修行になり、得られる喜び(楽)が強くなるという単純な話ではありません。お布施は、それを行う人にとっても功徳を積む重要な修行という考えです。

なぜ貧しい人は貧しいままなのかというと、自分のためにお金を使わないからという考えがあります。自分のためにお金を使うというと、稼いだ結果を自分の物欲に充てることと発想されがちですが、「自分のため」が意味するところは周囲のため、社会のために使う行為を指しています。

与える喜びを知ってもらいたい、それによって貧しさから抜け出してほしいという考えがあるからこそ、貧しい人、中でも心が貧しい人のところを回るのが托鉢の意味であると、お釈迦さまは説いています。

この話は、自業自得の自業によって苦しむ人に、その根本理由を気づいてもらい、「自業苦」(じごく)を経験して、その先に楽な世界を見出す「業苦楽」(ごくらく)を追求してほしいという願いを伝えるときに例(逸話)として出しています。

お布施をする先は、新たな世界に挑戦して、多くの人の「業苦楽」につながる活動に取り組んでいる人になったら嬉しいということを話すとともに、自分たちが活動するところにお布施が集まるようにならないといけないという戒めとして、自分に対しても話をするようにしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕