今ではコンサートでもなければシンガーとバンドが音合わせをすることはなくて、リハーサル歌手が登場することはありません。テレビ番組の生放送でもカラオケ音源を使うのが当たり前になっていて、以前のようにスタジオで生バンドが演奏することもなくなり、リハーサル歌手の需要は皆無に等しくなりました。
前回(業苦楽34)、リハーサル歌手の代わりをさせられて、それをきっかけに私の知人が来日させた2人の台湾出身歌手のリハーサル歌手をすることになったところまで書きました。
歌手や芸能人を目指していたのなら、よい機会と言えないこともないものの、他に仕事が複数あり、できるだけ余計なことをしないと宣言しながらも、次々に仕事が入っていた時期だったので、好きな音楽の世界であっても苦労としか感じない時期でした。
この連載コラムの「業苦楽」は、自業苦(じごく)を経験して初めて業苦楽(ごくらく)の境地に達するという浄土真宗の開祖の親鸞聖人の言葉からヒントを得ていますが、とても「業苦楽」を想像できるところではありませんでした。
それがリハーサル歌手のゴーストシンガーが“楽”かもしれないと感じたのは、本当のゴーストシンガーの話が舞い込んだときでした。
それが仕事になったわけではないものの、音楽業界と深く関わることにはなりました。
それ以前にクラシック音楽の専門誌の取材、テレビ局(全国キー局)との関わりがあったのですが、ゴーストシンガーを経験して音楽業界の裏事情を知り、言ってはいけないことを知り、別の目線から見ることによって、その後のメディアとの関わりの役に立ったのは間違いないことです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕