なぜ山に登るのかと聞かれて、「そこに山があるから」と答えたのはイギリスの登山家のジョージ・マロリーですが、山があるから登るという単純な話ではありません。
この言葉の“山”は当時(1923年)は、まだ誰も登ったことがないエベレストのことで、登山家として最高峰を目指す決意を述べたと伝えられています。
この言葉が名言として今に残っているのは、人生の困難に立ち向かう姿勢を象徴しているからというのが大方の見方です。
そこまで高貴な(値打ちがある)話ではないのですが、続けてきたことを止めることができなくて、まるでランニングハイのようになっていて、これが自業苦(じごく)となっていることもあります。
ランニングハイは、長距離走を続けていると、ある時点から急に苦しさが和らいで、快感や高揚感を感じている状態を指しています。実際に、苦しい段階になって、それを続けていると脳内でβ−エンドルフィンなどの快感物質が分泌されるようになります。
β−エンドルフィンは脳内麻薬とも呼ばれる神経伝達物質で、この快感が忘れられなくなって、止めることが苦痛になってきます。こうなると、実際には快感ではないこと、必要ではないことを続けて、それが自業苦の苦しみを重ねていくことにもなります。
自分のやっていることが喜びのためなのか、自業苦を続けていくだけ、苦しみを強くしているだけなのか、それとも自業苦の先の業苦楽(ごくらく)のためなのか、それを見直すことが必要ではないかとの考えをしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕