新規事業を始めるのは、誰のためでもなく自分のためという考え方があります。
会社や団体が新規事業に取り組むのは、稼ぎを増やすためということもあれば、一つの事業では社会的困難が生じたとき(例えばコロナ禍)に生き残れなくなることから、幅を広めておくということもあります。
幅を広げておくということは事業(自業)を続けてきて、思いもしなかった苦しみに遭遇した人にとっては当然の発想です。
こういった発想に対して、自分だけでも生き残ろうという発想もあって、すべてが失敗に終わっても創業者一族だけが生き残れば再建できるということから(そのような言い訳をして)別の事業にしておくということもあります。
有名な出版社は本社ビルの他に複数のビルがあって、最も地の利に優れたビルを会社ではなくて、オーナーの個人資産としていたことが例としてあげられています。実際に厳しい状態になったときに、他のビルは売却しても、一つだけは残して、そこから復活したいという話でした。
この話を例として、社員や取引先、融資先にもして、本社ビルの横に創業者一族のビルを作った社長がいたのですが、事業が厳しくなってきたときに、社長は自分のビルにこもって仕事をするようになりました。
社員に必死になっている姿を見せてないようにして、社員には不安を感じずに、安心して働いてもらおうとしてのことだった、と本人は話していました。
そのビルは居心地がよかったようで、必死になっていたのか、社員が頑張っているのに、「それに比べて社長は」と言われないようにしたかったのか、その結果が判明したのは、会社が傾いた後のことでした。
最後に残った自分のビルを基盤にしての再建が期待されていたのですが、最終的には“虎の子”のビルまで手放しました。社長や一族にしてみれば、業苦楽(ごくらく)であったとしても、他の社員は自業苦(じごく)という結果でした。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕