業苦楽41 天下りの苦と楽

天下りというと、あまり聞こえがよくない言葉ですが、それは周りから見ている人の感覚であって、天下りをする人にとっては「自分のためではなくて世の中のため」という感覚がみられることも少なくありません。

天下りは役人が定年後に関係する団体や企業などに移っていくことを一般には指していて、“役得”(役目についていることで得られる特別な利益)と後ろ指を刺されるようなこともあります。

役人の天下りだけでなくて、一つの世界で知識と人脈を得た人が退職をしたら、そこから先は使えなくなってしまうのではなくて、それを民間でも役立てる、それが日本の発展につながるという考えです。

技術者が退職をして、海外の会社に移ったことで、企業の秘密が持っていかれた、そのために日本の会社の売り上げが大きく低下したということも起こっています。これを防ぐために定年退職年齢を60歳から65歳に引き上げる、定年をなくしてしまうという会社も現れて、それを後押しする制度が2005年4月から日本でも始まりました。

天下りが秘密を守ることになるということでは、防衛関係の重要なポジションを占めた方が、関連する企業に天下りするのは当然のことと考えられています。退職して一般市民になったら、もう組織から守ってもらえなくなります。

拉致でもされて、敵対する国に秘密が流れてしまったら防衛対策がガタガタになりかねません。私が知っているミサイル部門の研究所の長は、ミサイルを製造している大手企業に天下りして、亡くなるまで身が守られていました。

それは楽な状態と周囲から見られていたようですが、現役の苦を、ずっと引きずったまま続けなければならないので、業苦楽(ごくらく)はなくて、永遠に続く自業苦(じごく)であったと回想されていました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕