私が東洋大学で学んでいるときに知り合った真宗在家門徒会は、公的な組織ではなくて、私的に学ぼうとする在校生と卒業生を中心とした集まりです。
私が加わった大学2年の時(今から50年も前)には13人でしたが、20人以上になったことはなくて、10人を下回ることもないといった少人数のサークルのようなものでした。
メンバーは文学部のインド哲学科(イン哲)で学んでいた方だけでした。「学んでいた」と書いたのは、イン哲に在籍していた人だけでなく、他の学部・学科に在籍してイン哲で学んでいたメンバーもいたからです。
私は、法学部法律学科に在籍していたのですが、大学受験のために聞いていたラジオ講座の講師がイン哲の教授で、挨拶に行っただけのつもりが、特別に聴講させてもらうことになりました。
それは浄土真宗の寺院(新潟県出雲崎町)に預けられていたこと、その寺院が真宗十派のうち真宗大谷派で東洋大学の創立者の井上円了先生の実家の慈光寺(新潟県越路町)と共通点があり、教授が話すことの大筋が理解できたことが縁となってのことでした。
浄土真宗は信者のことを門徒と呼びます。ただ呼び方が違っているだけではなくて、親鸞聖人を宗祖として仰ぎ、阿弥陀仏の救いと念仏の生活を勤める人々を指しています。
門徒は他の宗派の檀家と同じだと説明されることもあります。檀家は寺院を経済的に支援する家という側面が強いのに対して、門徒は親鸞聖人の教えを拠り所として生きる者という信仰の主体性が重視されています。
真宗在家門徒会のメンバーは、出家して寺を継ぐわけでもなく、かといって出家をしていない門徒である在家門徒とも違います。在家門徒は、浄土真宗(真宗十派)の各寺院に登録して、寺院や宗派の活動に協力する人を指しています。
寺院に登録して地域の活動をしているわけではなくて、真宗の真の部分(真理)を生涯にわたって追い求めていきたいという考えを持った、少し変わったメンバーであったのは否定しません。
真宗在家門徒会では、出家して出生名から変えるのではないとしても、違った呼び方をしようということで、あだな(ニックネーム)をつけていました。私の名前は正人(まさと)なので、お寺の出身っぽく「正念」と誰かがつけたのですが、それは母親の実家の寺院で祖父が私につけて呼んでいた名前と同じでした。
今でも真宗在家門徒会のメンバーとはSNS時代のおかげで交流が続いていますが、中には私の本名を知らずに(忘れているだけ)「正念さん」と呼び続けている人もいます。
〔小林正人〕






