移住者でも“身土不二”で大丈夫?

“身土不二”という言葉があります。これは、もともとは仏教用語で、身は今までの行為と結果、土は身が拠り所としている環境で、この二つは切り離せないという意味です。環境に従って実践して結果を残すことが大切だという教えです。仏教では「しんどふに」と読みます。
これが今では食育や地産地消のスローガンとして使われるようになり、生活をしているところで採れた食べ物と自分の身体は切り離せない、つまり健康のためには生まれた土地の食べ物を旬の時期に食べるのがよい、という意味で身土不二(しんどふじ)が使われるようになっています。
食べ慣れたものを食べる、それも旬のものを食べるというのは、健康に役立ちそうなイメージはあるものの、私たちのように環境が異なるところから移住した者にとっては、それでよいのかという思いもあって、東京にいたときに講演などで、あえて使ってきた身土不二は、避けるようにしてきたところがあります。
地元で採れたものを中心に食べていた時代には、地元の食べ物、旬の食べ物だけでも生活ができたものの、今のように全国から食品が届く、旬がいつだかわからないほど年間を通じて出回る野菜があるという時代には、身土不二が合っているのか疑問だという声も多く聞かれます。実際に、そのような質問を講演のときにされたこともあります。
旬の季節には野菜の栄養素が多いのは当たり前のことで、例としてあげられることが多いほうれん草のビタミンCは、旬と旬以外では2倍もの開きがあります。もちろん旬の冬の時期には多く、春から夏には少なくなっています。地元の野菜が昔のような有機無栽培なら栄養素も多かったかもしれませんが、今は全国どこでも大量栽培になり、使用される農薬も化学肥料も以前とは大きく違っています。
戦後初の食品成分表を見ると、仕方なく有機無農薬であったために、ほうれん草のビタミンCは可食部100gあたり150mgだったのが、今では旬が60mg、旬以外が30mgとなっています。こういった全国的な均一化と栄養素の低下を考えると、移住者でも身土不二で特に問題はなく、移住者でなくても地元の食材を食べていれば健康と言えるのか疑問だということになります。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)