脳の健康寿命68 L‐カルニチンは脳の機能向上に役立つのか

身体のエネルギー代謝を高める役割をする代謝促進成分というと、L‐カルニチン、α‐リポ酸、コエンザイムQ10が代表的なものとなっています。どれも体内で合成されるので、サプリメントとして摂る必要はないと考えられることもあるのですが、合成のピークは20歳代前半で、年齢を重ねるにつれて代謝は低下していきます。3種類の代謝促進成分は、どれも以前は医薬品成分でしたが、今では食品の成分としても使うことが許可されていて、エネルギー代謝を促進するサプリメント素材としても使われています。
エネルギー代謝は全身に60兆個以上ある細胞で行われていて、そのエネルギー源は糖質(ブドウ糖)、脂質(脂肪酸)、たんぱく質(アミノ酸)となっていますが、脳細胞だけはブドウ糖しか使うことができません。というのは、脳細胞に栄養素を届けるためのゲートである血液脳関門はブドウ糖しか通過できないからです。
ブドウ糖のエネルギー代謝を高める代謝促進成分はα‐リポ酸なので、脂肪酸の代謝促進成分のL‐カルニチンは脳の健康寿命延伸には必要がないと言われたときもあります。しかし、全身の血流をよくしないとブドウ糖が脳細胞に届きにくくなります。血流を即するためには血液の温度を高めることが必要で、その働きがL‐カルニチンにはあるのです。
全身の細胞で作られるエネルギーのうち生命維持の基礎代謝に使われるのは70%ほどで、基礎代謝の70%ほどは体温の維持に使われます。つまり半分ほど(70%×70%=49%)は体熱になり、血液の温度を高めてくれます。日本人は血液温度が欧米人や北方系アジア人に比べると1℃ほど低くなっています。羊は44℃、牛や豚は42℃、鶏は40℃と血液温度は人間よりも高くて、冷たい血液に入ると、その中に含まれる脂肪は固まりやすくなります。日本人は血液中の脂肪が固まりやすいので、血流も低下しやすくなっています。
L‐カルニチンを摂って、エネルギー産生を進めて血液温度を高めることは、脳に運ばれるブドウ糖を増やすことにもなるので、L‐カルニチンは脳の健康寿命を延ばすために役立つというのが結論です。