腸の状態がよいことは健康づくりの基本です。腸は栄養素を吸収するとともに、40歳以降には全身の抵抗力を高める免疫のセンターともなっているので、腸の状態を整えることは重要となります。
その腸の健康を保つために、まず対処しなければならないのは、腸内細菌の善玉菌を増やすことです。腸内細菌は善玉菌と悪玉菌、そのほかに腸内環境によって善玉菌にも悪玉菌にもなる日和見菌に分けられます。
腸内細菌の総数は約1000兆個と、ほぼ決まっているので、善玉菌を増やすことで、有害な物質を作り出す悪玉菌を減らすことができます。
腸内細菌は、もともと体内にいたものではなく、生まれてすぐに母親から受け継いだもので、その腸内細菌が増殖して腸内に定着したものです。女性は皮膚に棲みついている常在菌の乳酸菌が多く、これが善玉菌のもととなっています。
そのため、女性が糠漬けを混ぜると皮膚の乳酸菌が入って、ますます発酵が進むのに対して、男性が糠漬けを混ぜると乳酸菌が少なく、雑菌が多いために腐敗が進むといいます。
女性の常在菌で多くを占める乳酸菌は、もともとは膣内に棲みつく乳酸菌の一種の乳酸桿菌で、それが体外にも出てきた者です。膣内では雑菌を防ぐために、乳酸桿菌によってヨーグルトのような発酵物が作られています。
腸内に、体の外から入ってきて定着した腸内細菌が増殖するためにはエサに当たるものが必要です。腸内細菌は、胎児のときには腸内には存在せず、誕生してから定住したものだけに、活動するためにはエサに当たる栄養源が必要となります。
善玉菌のエサとなっているのは、主には糖質、乳製品、食物繊維です。乳製品は胃の中で乳糖分解酵素によって乳糖になり、これを善玉菌がエサとします。食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維とがあり、善玉菌が好むのは不溶性食物繊維のほうです。
研究によって、水溶性食物繊維も善玉菌のエサとなることが確かめられています。しかし、水溶性食物繊維を摂ることで善玉菌が増えるとして販売していたサプリメントが、厚生取引委員会によって、不当な表示をしているとして排除命令を出されてから、水溶性食物繊維が善玉菌のエサになるということが語られなくなりました。
腸内の善玉菌が多いのか、それとも悪玉菌が多いのかは、トイレで確認することができます。
腸内の善玉菌が多くなると、発酵が進むことによって便の色は黄色くなり、臭いも弱くなっています。また善玉菌の発酵によって便の量も多くなります。
それに対して悪玉菌は主には動物性たんぱく質と脂肪をエサにしているので、成長につれて食生活が変わると悪玉菌が増えていきます。現在の食事は洋食が多く、肉類と脂肪という悪玉菌を増やしやすいものが増えているだけに、善玉菌を増やすものを多く摂らなければなりません。
そのために積極的に摂るべきものは、プロバイオティクスと呼ばれています。
その代表的なものはビフィズス菌などの乳製品や発酵食品に含まれている微生物です。ビフィズス菌は腸内にも多く棲みついていますが、ヨーグルトやサプリメントとして摂り入れたビフィズス菌は腸内では1日か2日ほどしか棲息することができません。だから、少量でもよいので、毎日、摂ることがすすめられます。
腸内には定着しないものの、腸内に一時的にビフィズス菌が増えたことで、腸内での発酵が進み、腸内は酸性傾向になっていきます。その結果、酸性傾向の環境の中で増殖しやすい善玉菌が増えていくようになります。
つまり、腸内環境を酸性傾向にして、善玉菌を増やすためには、少量でもよいので、継続してプロバイオティクスを摂るようにすべきだということです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕