食事の洋風化につれて摂取量が減っていったものに食物繊維があります。食物繊維は食品として食べても、消化もされず、ほとんど形を変えずに小腸を通過し、吸収もされません。そのため、栄養成分としては役に立たないからと、邪魔者扱いされた時代もありました。
消化も吸収もされなくても、健康維持に役立つことが明らかにされてからは、積極的に摂るべきものと位置づけられ、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルに次ぐ第6の栄養素と呼ばれています。
食物繊維は、そのまま大腸にまで届いて発酵を盛んにして、便通をよくしてくれます。また、繊維状のまま腸を通過していくので、腸内の有害物質を一緒に連れ去っていく働きもあります。
腸内の環境を整えるためには欠かせない存在である食物繊維の摂取量は減る一方です。昭和30年には1日に平均に22gの食物繊維を摂っていたのですが、今では約15g以下と、30%以上も減少しています。
食物繊維の摂取というと、野菜の葉や根を思い浮かべることが多いはずです。確かに食物繊維が多く含まれていますが、昭和30年代の食物繊維摂取量と現在の摂取量を比べると、葉と根の摂取量はほぼ足りています。
食物繊維の目標摂取量としては、成人で1日あたり20~25gが理想とされていますが、食物繊維の中でも、特に減っているのは米と豆、イモ、雑穀からの摂取で、約半分にも落ちています。また、きのこや海藻、コンニャクの食物繊維も減っています。
食物繊維は、水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維とに大きく分けることができます。不溶性食物繊維は穀類、イモ類、野菜に含まれているセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどで、食感は硬くてボソボソしています。
水溶性食物繊維はヌルヌル、ネバネバしているのが特徴です。成分としてはコンブやワカメなどの海藻類に含まれるアルギン酸やラミナリン、コンニャクやサトイモ、ヤマイモに含まれるマンナン、きのこのキトサン、野菜や果物に含まれるペクチン(特にリンゴに多い)があげられます。
コンニャクには水溶性食物繊維が多く含まれているものの、凝固剤を使って固めると、それ以上は変化しなくなり、口から入った形のまま胃から小腸、大腸を通過していきます。凝固剤によって水溶性食物繊維が不溶性食物繊維に変化したというわけです。
便通をよくしてくれる食物繊維ですが、不溶性食物繊維には便を硬くする作用もあります。ガンコな便秘の人が不溶性食物繊維を多く摂りすぎると、かえって便秘を進めることにもなりかねません。それに対して水溶性食物繊維は便を軟らかくするので、スムーズな便通を求めるなら、不溶性と水溶性の両方の食物繊維を摂るようにしてほしいものです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕