母親の実家の寺院で暮らす中で知ったことは、その先に役立つことばかりでしたが、一つだけ困ったことを身につけてしまうことになりました。
それは葬式のときの準備や片付けなどで、あまりに的確にこなすことから葬儀屋に間違われることで、それは何回もありました。また、葬儀会社からスカウトされたことも何度もありました。
その手際の良さは、大学1年生のときに地元出身の国会議員の東京の邸宅に出入りしていたときに最も発揮されました。国会議員と葬式はつきものということで、かなり重宝がられていました。
自分が育った寺院の宗派だけでなく、大学の図書館には全宗派に関わる書籍があり、初めのうちは目先の葬式に関する書籍を読んで“付け焼き刃”で対応していました。
しかし、1年間に関わる葬式の数は尋常ではなく(たまたま総理大臣の時期であったことから頻繁に葬式と関わることがあって)、いつの間にか各宗派の儀式に詳しくなっていました。
宗派によって作法が異なるので、それを間違えたら国会議員だけでなく、地方議員でも違いを知っておくことは重要となります。本来なら議員本人が知っておくべきことなのでしょうが、忙しい議員に、中でも国会議員に、それを求めるのは大変なことです。
そこで議員の秘書に知ってもらったほうがいいということになって、その役割が私に回ってきました。
初めのうちこそ若造の講師という感じでしたが、基本を知った後には、実際の葬儀に際しての応用編が求められるようになり、秘書から電話がかかってきたら、それに応えるということをしていました。
その電話は、いつかかってくるかわからないということで、対応のために生活時間が乱れるのが一番苦しかったという感じでした。
普通だったら仕事が減ってくるのは辛いところでしょうが、葬儀のための対応が減るのは、理解が進んだということでもあり、時間的にも楽になるので、これは苦が楽に変わったという認識ができました。
〔小林正人〕






