言い間違い22 苦汁を味わう

「くじゅう」を文字変換すると「苦渋」と「苦汁」が選択候補として登場する変換ソフトが多くなっています。

「苦渋」は苦くて渋いことを、「苦汁」は苦い汁を指しています。同じような感じではあっても、苦渋は汁とは限らなくて、苦汁は苦いものの対象が決まっています。

苦渋は抽象的な苦難や精神的な苦しみを意味していて、苦汁は苦い汁を飲むように直接的な苦難や不快な経験を意味しています。

苦汁は口の中に入れて、その味わいがわかるものなので、「苦汁を味わう」と言っている人がいても違和感を感じないこともあるかもしれません。
しかし、苦汁に続くのは「なめる」で、「苦汁を味わう」は誤用です。正しい使い方は「苦汁をなめる」です。

苦汁は「にがじる」と読まれることも多いものの、初めに書いたように「くじゅう」が正しい読み方です。間違った読み方をされるのは、肉汁を「にくじる」と読むのと同じようなもので、肉汁の正しい読み方は「にくじゅう」です。

「苦汁をなめる」が正しい使い方であると言うと、汁は飲むものであって、なめる(舐める)というのは変ではないか、という声も聞こえそうです。実際に、そのようなことを言ってきた人もいますが、「飲むことができない苦い汁はなめるくらいしかできない」と切り返すようにしています。

そして、苦い汁は吐き出したいようなもので、少なくとも「苦汁を味わう」ということはできない、という話もしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕