言い間違い28 腹を崩す

以前であれば辞書を引いて言葉の意味を理解するのが中心だったことから、間違った使い方をしている人は、読むだけで間違いに気づくことが容易にできました。正しい使い方は辞書に載っていても、間違った使い方は載っていないということです。

ところが、今のようにネット検索で簡単に言葉の意味を調べられるようになっていると、間違った使い方が先に出てきたり、間違いが正しい使い方のように説明されていることも少なくありません。

例えば、「腹を壊す」で引いても、「腹を崩す」で引いても同じ説明(下痢や複数など、お腹の調子が悪くなる状態といったこと)が出てくることがあります。どちらが正しいのか、それとも両方とも使われるのかは、ネット検索ではわかりにくいところがあります。

辞書であれば、単独の使い方か両方の使い方があるのかは明確に示されています。

「腹を崩す」というのは、辞書的には間違い(誤用)とされています。正しいのは「腹を壊す」です。

「腹を崩す」は「腹を下す」が混同した結果で、意味は下痢をすることです。下すのは下痢のことで、壊すは下痢と腹痛の両方が該当します。言葉づかいで、お腹の状態の違いが推測できます。

壊す(こわす)も崩す(くずす)も、崩壊という用語に使われているので、さらに間違いやすいところがありますが、崩壊は形があるものが壊れたり、状態が破綻することです。

下痢までいかない軟便や軟便は壊すのほうが相応しいような感じです。それが健康を破綻させるようなところまで進んでしまったら、これは経験したくはないところですが、「腹を崩す」という状態と言えるかもしれません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕