言い間違い40 鬼の撹乱

鬼は怖いものの象徴とされることから、鬼が現れて平和な状態を掻き乱すことは「鬼の撹乱」と表現されることがあります。言い間違いというよりも、書き間違いの例ではあります。

撹乱(かくらん)の掻き乱すという意味は、小さな出来事ではなくて、生態系や環境を見出す出来事のことを指していて、脅威となる自然現象(地震、火山噴火、台風、豪雨など)によって生命の危機につながる状態を表すときに使われます。

鬼が現れたかのような悲惨な状況ということなのでしょうが、「鬼の撹乱」は明らかな誤用です。正しい使い方は「鬼の霍乱」で、霍乱(かくらん)は平安時代から使われてきた医学用語(漢方医学)で、夏に起こりやすい体調不良を指しています。

現代的にいえば、日射病や胃腸炎のことで、吐き気や下痢を伴う急性の病気です。そこから暑さにあたって体調を崩すことを指すようになりました。

「鬼の霍乱」は、病気とは無縁な元気な人が病気になってしまうことですが、今では、ちょっとした不注意で病気になるという軽い意味で使われることが多くなっています。

「鬼の霍乱」の“鬼”は悪いものではなくて、強い者という、よい意味での象徴として使われています。「鬼の霍乱」を起こすような立派な人であることがポイントで、その意味合いが伝わらないと、せっかくの正しい言葉が活かされないことにもなります。

間違った使い方の中には、「鬼の錯乱」というものもあります。錯乱(さくらん)は意識が混乱することで、鬼が錯乱状態になったら、それこそ怖い状況になってしまいます。どんな立派な人でも、錯乱をしては本来の力が発揮できなくなるので、「鬼の錯乱」とならないように、「鬼の霍乱」の段階で、もしくは霍乱にもならないように、日常生活で注意することが大切という話をさせてもらっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕