松下幸之助さんをパナソニックグループの創業者と説明する文章を見ると、松下電器産業の創業者として会い、インタビューさせてもらい、その言葉を書籍の原稿として書いてきた身としては、すっきりと受け入れられない感覚がありました。
その感覚が変わってきたのは、パナソニックグループのホームページの経営基本方針の「人をつくり人を活かす」の最後に、松下さんの言葉が、そのまま掲載されているのを見てからです。
「事業は人なり」:どんな経営でも適切な人を得てはじめて発展していくものである。いかに立派な歴史、伝統を持つ企業でも、その伝統を正しく受けついでいく人を得なければ、だんだんに衰微していってしまう。経営の組織とか手法とかももちろん大切であるが、それを活かすのはやはり人である。〈中略〉だから、事業経営においては、まず何よりも人を求め、人を育てていかなければならないのである。
金言や名言というのは、真意が徐々に薄れていって、本来の意味合いが伝わらなくなることがあります。それどころか誤った理解をされて、間違った使われ方がすることが、かなりあります。
松下幸之助さんの金言の「任せて任さず」を、勘違いしてのことか、部下に任せたプロジェクトに対して過剰に干渉する上司がいます。
任せるからには、その準備を万全にして、途中経過を把握して、必要とあれば的確なタイミングでアドバイスをしていくという金言の意味がわかっていないと、準備もないのでうまく進まない、これからというときにチャンスを潰すことにもなりかねません。
任されたからには干渉されることを極端に嫌い、報告、連絡、相談(ほうれんそう)をしなくなる部下がいます。今どきの(という表現が合っているのか疑問もあるのですが)若者には共通した感覚で、そんなことにならないように心に刻んでおきたいのが「任せて任さず」という金言です。
〔セカンドステージ連盟 小林正人〕