「足るを知る」は、中国の思想家・老子が書いた『道徳教』の一説の「知足者富」(足るを知る者は富む)が原型です。
この“富む”というのは、物質的な豊かさではなく、精神的な豊かさや幸福感を得られることを指しています。そして、自分のおかれている現状に満足して、周りへの感謝を忘れない内面の豊かさを表す言葉といえます。
「知足者富」は、仏教の経典に登場する「知足」をもとに、道家思想の影響を受けて生み出した金言とされていますが、紀元前6世紀の老子の時代には、仏教の経典はインドから中国には伝わっていないというのが歴史研究の見解です。
「知足者富」は老子のオリジナル発想なのか、それとも仏教の経典が伝わってきてから誰かが書いたのか(もしくは付け加えた)のか、そこは謎のまま残しておいて、「知足者富」の意味するところを理解することが一つです。
そして、金言として今に伝わる「足るを知る」の意味を知って、自分に合わない豊かさ、身分に合わない満足を求めて誰かに卑屈になるのではなく、身分相応の倹しい(つつましい)生活をすることの大切さを、身をもって実践していくという生き方そのものといえます。
人間の欲望や欲求は際限がなくて、どこまでも湧いてくるものです。それがあるからこそ成長も発展もできるという考え方がある一方で、現在よりも上を求め続けることは、いつまでたっても幸せになれない、幸せを感じることができないということを老子は言い表しています。
欲によって人を振り回すことになり、自分自身の人生を振り回すことにもなるという考えから、人と争わないためにも今の状態に満足することが重要との教えです。
この考えは、ミニマリズムと共通するところがあります。ミニマリズムを実践するミニマリストは、さまざまな考え、さまざまな実践法があって当然かと思いますが、一般社団法人全日本ミニマリスト協会の理事の一人として、私はどのように考えるのか、その原点となっている考えについては次回(金言の真理24)からに伝えさせてもらいます。
〔セカンドステージ連盟 小林正人〕