野村克也さんの書籍のタイトルにも講演のテーマにもよく使われていた「敵は我に在り」は、真の敵は外にいるのではなくて、自分自身の中にあるという意味で、困難や失敗の原因を他人のせいにするのではなく、自分の弱さや怠惰、準備不足など、内面に原因を求めるべきだという戒めの言葉です。
このことは前々回(金言の真理2)で紹介しましたが、野球の世界ではプロに限らずアマチュアでも何かのせい、誰かのせいにするのは当たり前に見聞きすることです。
ヒットを打てなかったのは、相手のピッチャーが凄すぎたからというのは理解できないことではなくて、言い訳とは決めつけられないところがあります。
ところが、打ちにくい雰囲気だったと球場や観客のせいにしたり、監督の指示がわかりにくかったと口にするようになると、これは言い訳です。
エラーをしたのは、グラウンドが荒れていた、グラウンド整備がよくなかった、太陽や照明の光が目に入った、球審が邪魔になった、というようなことを言い出すのは自分のせいではないと言いたいからです。
これは日常的なことでも同じようなことはあって、ただ歩くだけなのに転んだとすると、道が凸凹(デコボコ)していた、坂道だった、路面が柔らかかった、石があったなどと、まず道のせいにしようとします。
そうでないことがわかると、靴が合わなかった、紐が強く結べなかった、靴と靴下が合っていなかった、履き慣れた靴ではなかったと、次は履き物のせいにします。それも言い訳に使えないと、まだ考えます。
歩き慣れていない道だった、仕事で疲れていた、寝不足になるようなことがあった、一緒に歩いている人がいたのでペースが合わなかった、ということを言い出して、年齢のせい、運動不足のせいとは、なかなか認めないのが常です。
そんな人にこそ伝えたいのが「敵は我に在り」という金言です。
〔セカンドステージ連盟 小林正人〕