今回のお題の「困った時の神頼み」は、「苦しい時の神頼み」という使い方もされますが、苦しくなったときや自分の力だけでは解決できないときに、神仏に助けを求めることを指しています。
そこから転じて、普段は関心がないような顔をしたり、当てにしていない振りをしているのに、都合がよいときだけ頼ろうとする態度を戒める意味でも使われています。
大手出版社でゴーストライターを務めるきっかけとなったのは、経営の神様と称される松下幸之助さんの書籍を手掛けることでしたが、原稿を書いている段階(今と違って、本当に原稿用紙に原稿を手書きしていた)では、PHP研究所が困った状態で“神様”の名跡に頼ってのことなのか、余裕があってのことなのかはわかりませんでした。
PHP研究所を創立したのは松下幸之助さんです。
「Peace and Happiness through Prosperity」の頭文字をとったもので、「繁栄によって平和と幸福を」という意味があります。物心ともに豊かな真の繁栄を実現していくことによって、真の平和と幸福をもたらそうとの願いが込められています。
そのためには人材育成が重要であるとの思いから設立したのが松下政経塾で、1980年の第1期生に対して松下さん自らが語ったことを書籍にして残そうとして、翌年に発行されたのが『松下政経塾 塾長講話録』でした。
これを手掛ける前は、著名人の書籍に関わることはなかったのですが、私が編集に参加していた「月刊バレーボール」の編集部員から、元の職場の先輩からの依頼ということを聞き、初めはテープ起こしで原稿書くだけということでPHP研究所の編集部長を訪ねました。
誰が著者の書籍かも知らずに、ほんのアルバイトのつもりだったのですが、渡されたカセットテープには数字だけが書かれていて、指示書に「松下政経塾 塾長講話」とありました。
そのときに初めて松下さんの話したことを書籍にする“手伝い”だということがわかり、経営の神様の講話を聞くことができるということで、ギャラも聞かずに即決で引き受けました。
それが、まさかPHP研究所で150冊のゴーストライターを務める初めの仕事になることは思いもしなかったことです。
〔セカンドステージ連盟 小林正人〕