金言の真理62「唯我独尊」1

「唯我独尊」(ゆいがどくそん)は、仏教の逸話の中では根幹となる言葉であるのに、間違った使い方がされがちで、中には唯我独尊の4文字を見て、暴走族やヤンキーを思い浮かべる人もいるはずです。

実際に、背中に唯我独尊と書かれた(縫い込んだり、染めたり)ジャンパーを着たり、チーム名にしていたグループも存在していました。

そんな負の印象も抱かれる言葉を“金言”とするのは如何なものかとの声も聞こえてきそうですが、この連載のテーマは「金言の真理」であって、間違った使い方を正して、金言の本来の意味を伝えることも目的としての執筆です。

負の印象が抱かれるようになったのは、“尊”を偉いという意味だと受け止めた結果で、本人として「無敵」とか「俺が最高」というイメージで、独りよがりのカッコよさを示したとも(新語・現代用語的に)解釈されています。

しかし、唯我独尊は誰の言葉だったのかを知ったら、考えを改めることでしょう。

唯我独尊は、お釈迦様の生誕逸話として語られ続けてきた言葉です。

お釈迦様は誕生したときに、いきなり立ち上がって歩き、右手を天に、左手を地に指し、「天上天下唯我独尊」と言葉を発したと伝えられています。

天上天下(てんじょうてんげ)は、天の上(宇宙)と天の下(地上)と表しています。天下は地下のことではなくて、天上天下で“この世”という意味合いとなります。(諸説はあるのですが)

天上天下唯我独尊は、「この世で自分より尊い者はいない」と解釈されることがあって、今も独善的な態度を改めない人に対して揶揄(やゆ)するように使われることもあります。

「ただ一人、誰とも代わることがない尊い存在」と解釈されることもあり、お釈迦様が独善的な考えを示されたとは考えにくいことから、後者の意味であると一般には理解されています。
〔セカンドステージ連盟 小林正人〕