金言の真理90「井戸を掘った人」3

田中角栄さんの目白の私邸に出入りするようになったのは、地元の後援者であった高校の同級生の父親を私邸に案内したのがきっかけでしたが、それが田中邸の錦鯉の世話係をアルバイトで定期的にやらせてもらうようになるのには、もう一人の「井戸を掘った人」が登場します。

それは私の叔父(母親の姉の配偶者)で、新潟県の公務員として錦鯉センターの所長を務めていました。

それは私が高校生のときで、時間さえあれば通って錦鯉について教えてもらっていました。

新潟県の小千谷地域は錦鯉発祥の地で、それについて知っておくことは、いつか東京で役立つこともあるだろう程度の感覚ではあったものの、それがいきなり田中邸で役立つことになるとは思ってもいなかった(というか超ラッキーな)ことでした。

初めて田中邸に行ったときに、庭に出て、錦鯉が泳ぐ池を見せてもらいました。案内したのは秘書で、前回(金言の真理89)書いた総理大臣の中国訪問に同行した秘書と同じ方です。

総理大臣になったお祝いもあって、多くの錦鯉が贈られて、それが混雑と感じるほど数多く泳いでいました。テレビで見たときよりも、明らかに多くなっていました。

「元気がなくなったようだ」との話をされたときに、数が多すぎることを言う人は多いようですが、私が話したのは「水がきれいすぎる」ということでした。

錦鯉は澄んだ水の中を泳いでいるという印象が抱かれがちです。それはイメージであって、他の鯉と同じように泥の中でも棲めるし、少し濁ったくらいの水のほうが元気に活動できます。

錦鯉は鮮やかな色を示す意味もあって、きれいすぎる水になりがちです。そのために水を多くすることから、水道水を使うこともあります。水道水よりも井戸水のほうがよいといっても、井戸を掘っても水が出にくい高台です。

その話を聞いたときに、「そんなのは簡単では」と口から出てしまいました。

毎日のように選挙区から来客があって、クルマで来る人も多いのだから、途中で錦鯉を育てている井戸水を汲んで運んでもらえばよいのでは、という話をさせてもらいました。

そのときのことを後に、「井戸を掘って、よい水を提供してくれる人のことを忘れない」という表現で関係者に伝えました。
〔セカンドステージ連盟 小林正人〕