金言の真理96「天上大風」4

良寛和尚の書の「天上大風」(てんじょうおおかぜ)の意味については、子どものときに暮らした母親の実家の寺院(新潟県出雲崎町)の住職(祖父)からは、「天の下は風がなくても天の上は大風が吹いているので注意が必要だ」と聞かされていました。

その話は他の人からも聞いていたのですが、本当のことなのかを知ったのは東洋大学の図書館で、山のようにある仏教関連書を開いたときでした。

そこに書かれていたのは、良寛和尚の書ではなくて、お釈迦様の誕生の逸話です。誕生した直後に立ち上がり、7歩歩いて、片手を天に、もう一方の手を地に向けて「天上天下唯我独尊」と発したとのことです。

そこにあった説明を簡単にまとめると、以下のようなことでした。

「他と比べて自分のほうが尊いということではなく、天上天下にただ一人の誰とも代わることのできない人間として、何一つ加える必要もなく、この命のままに尊いということの発見である。」

良寛和尚の「天上大風」の“天上”と同じ言葉であることから、「雲を突き抜けて天に上がれば、大きな風に乗って自分しかできないことができる」という意味ではないかとも考えていました。

社会人になってからのこと、酒のペンクラブの例会で、酒造会社の方が持ってきてくれた複数の日本酒の銘柄の中に「和楽互尊」があって、メインとして出されていた純米吟醸酒には「天上大風」の書が使われていました。これは「てんじょうたいふう」と読みます。

裏書きに意味が書かれていて、そこには「天の下は風がなくても天の上は大風が吹いているので注意が必要だ」と、祖父から聞いたことと同じことが記されていました。

そういえば和楽互尊の池浦酒造があったのは良寛和尚の修行の地の和島村で、出雲崎町に面していました。出雲崎町には酒造会社がなかったので、寺院で使われていたのは和楽互尊でした。
〔セカンドステージ連盟 小林正人〕