食のリテラシー27 糖質の減らしすぎ

糖質と脂質(脂肪)の摂りすぎは生活習慣病の要因にもなることから、減らしたほうがと考えられているところがあります。糖質の摂りすぎが血糖値を上昇させることになり、脂質の摂りすぎは肥満だけでなく、動脈硬化を引き起こす要因になることが知られています。

こういったことから糖質を減らすことが叫ばれるようになり、その行き過ぎの糖質制限も広まっています。“制限”ということは摂りすぎないようにするという意味であるはずなのに、できるだけ減らす、理想は摂らないことという極端なことを言い出す人もいます。

それが一般の人であれば専門家によって間違いが指摘されることが期待されるところですが、専門家であるはずの医師の中にも糖質制限を積極的にすすめる人は増えてきています。

その理由として、糖質を制限すると血糖値が上昇しなくなって糖尿病が治るということがあげられています。血糖は血液中のブドウ糖のことで、糖質を制限するとブドウ糖が含まれる糖質の摂取が減るので、血糖値が下がるのは当たり前のことです。

糖尿病の診断は血糖値が着目されますが、では血糖値が下がれば糖尿病になった人が元の状態に戻るのかというと、そんなことはありません。糖尿病は高血糖状態が長く続くことによって、膵臓から分泌されるインスリンが大きく減ってしまうことが大きな原因です。

血糖値が下がれば、細胞にブドウ糖を取り込むインスリンが回復するわけではないのです。

脳細胞はブドウ糖しかエネルギー源にならないので、極端なブドウ糖不足は脳の機能を大きく低下させます。脳の機能を維持するために、最低限必要となるブドウ糖の量は120gとされています。

糖質制限派の専門家がよく口にするのが「必須ブドウ糖とは言わない」ということです。必須脂肪酸、必須アミノ酸という用語があるのに対して、必須ブドウ糖とは言わないのは確かです。

これは脂肪酸にもアミノ酸にも必須と非必須があり、体内で合成されずに飲食で摂取しなければならないのが必須と呼ばれます。ブドウ糖は原則的には体内で合成されないので、必須であるので、あえて必須ブドウ糖と呼んでいないだけです。

“原則的に”と書いたのは、糖質以外の成分を使ってブドウ糖が肝臓や腎臓で合成される糖新生があるからです。しかし、これはブドウ糖が不足した危機的状況で起こることで、糖新生があるから糖質は必要ないというようなことを言うのは間違いといえます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕