「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中からトランス脂肪酸の「生活習慣病の発症予防」を紹介します。
〔生活習慣病の発症予防〕
トランス脂肪酸は、飽和脂肪酸よりもLDLコレステロール/HDLコレステロール比を大きく上昇させることが、介入試験をまとめたメタ・アナリシスで示されています。
コホート研究をまとめたメタ・アナリシスでは、工業由来トランス脂肪酸の最大摂取群は最小摂取群に比較して冠動脈疾患発症の相対危険が1.3倍であったと報告されています。
トランス脂肪酸摂取に関する類似の結果は、その後の類似のメタ・アナリシスでも報告されています。
トランス脂肪酸摂取が数週間以内の血糖変化に与える影響を観察した介入試験をまとめたメタ・アナリシスでは、トランス脂肪酸摂取は血糖変化に有意な変化を与えなかったと報告しています。
また、コホート研究をまとめたメタ・アナリシスでも、糖尿病発症率との間に有意な関連を観察していません。
なお、トランス脂肪酸は工業由来のものと、反芻動物の胃で微生物によって生成され、乳製品、肉の中に含まれているものに大別されますが、現在までのところ由来の違いによる影響を区別するには十分なエビデンスは得られていません。
日本人のトランス脂肪酸摂取量(欧米に比較して少ない摂取量)の範囲で疾病罹患のリスクになるかどうかは明らかではありません。
しかし、日本人の研究においてトランス脂肪酸の一種であるエライジン酸の血中濃度が認知症発症との関連を認めています。
欧米での研究では、トランス脂肪酸摂取量は、冠動脈疾患、血中CRP(C反応性たんぱく質)値と用量依存性に正の関連が示され、閾値は示されていません。
また、日本人の中にも欧米人のトランス脂肪酸摂取量に近い人もいます。
なお、工業的に生産されるトランス脂肪酸の人体での有用性は知られていません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕