食事摂取基準120 炭水化物3

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から炭水化物の「機能」を紹介します。

〔機能〕
栄養学的な側面からみた炭水化物の最も重要な役割は、エネルギー源です。

炭水化物から摂取するエネルギーのうち、食物繊維に由来する部分はごく僅かであり、そのほとんどは糖質に由来します。

したがって、エネルギー源としての機能を根拠に食事摂取基準を設定する場合には、炭水化物と糖質の食事摂取基準はほぼ同じものとなり、両者を区別する必要は乏しくなっています。

糖質は、約4kcal/gのエネルギーを産生して、その栄養学的な主な役割は、脳、神経組織、赤血球、腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋など、通常はブドウ糖(グルコース)しかエネルギー源として利用できない組織にブドウ糖を供給することです。

脳は、体重の2%程度の重量ですが、総基礎代謝量の約20%を消費すると考えられています。基礎代謝を1500kcal/日とすれば、脳のエネルギー消費量は300kcal/日になり、これはブドウ糖75g/日に相当します。

脳以外の組織もブドウ糖をエネルギー源として利用することから、ブドウ糖の必要量は少なくとも100g/日と推定され、すなわち糖質の最低必要量はおよそ100g/日と推定されます。

しかし、肝臓は、必要に応じて筋肉から放出された乳酸やアミノ酸、脂肪組織から放出されたグリセロールを利用して糖新生を行い、血中にブドウ糖を供給します。したがって、これは真に必要な最低量を意味するものではありません。

食物繊維は、腸内細菌による酵素分解によってエネルギーを産生します。しかし、その値は一定ではなく、有効エネルギーは0〜2kcal/gと考えられています。

さらに、炭水化物に占める食物繊維の割合(重量割合)は僅かであるために、食物繊維に由来するエネルギーが炭水化物全体に由来するエネルギーに占める割合はごく僅かです。

なお、日本食品標準成分表(八訂)では、食物繊維は2kcal/gのエネルギーを産生する栄養素としてエネルギー計算に含められています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕