「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から炭水化物の「生活習慣病の発症予防」を紹介します。
〔生活習慣病の発症予防〕(目標量の策定方法)
*成人・高齢者・小児(目標量)
炭水化物の多い食事は、その質への配慮を欠くと、精製度の高い穀類や甘味料・甘味飲料、酒類に過度に頼る食事になりかねません。これは好ましいことではありません。
同時に、このような食事の数多くのビタミン類やミネラル類の摂取不足を招きかねないと考えられます。これは、精製度の高い穀類や甘味料・甘味飲料、酒類は各多くのビタミン、ミネラルの含有量が他の食品に比べて相対的に少ないからです。
たんぱく質の目標量の下の値(13%エネルギーまたは15%エネルギー)と脂質の目標量の下の値(20%エネルギー)に対応する炭水化物の目標量は66%エネルギーまたは67%エネルギーとなりますが、それよりもやや少ない65%を目標量(上限)とすることとしました。
したがって、たんぱく質、脂質、炭水化物のそれぞれの目標量の下の値の合計は100%エネルギーにはなりません。この点に注意して用いる必要があります。
一方、目標量(下限)は、たんぱく質の目標量の上の値(20%エネルギー)と脂質の目標量の上の値(30%エネルギー)に対応させました。ただし、この場合には、食物繊維の摂取量が少なくならないように、炭水化物の質に注意すべきです。
ところで、アメリカ人中年男女(45〜64歳)12,428人を25年間追跡して、炭水化物摂取量と総死亡率との関連を検討した報告によると、炭水化物摂取量が50〜55%エネルギーであった集団で、最も低い総死亡率と最も長い平均期待余命が観察されました。
同時に、総死亡率の上昇と平均期待余命の短縮は炭水化物摂取量が55〜65%エネルギーであった集団ではわずかでした。これは、目標量の範囲を50〜65%エネルギーとすることを間接的に支持する知見であると考えられます。
*妊婦・授乳婦(目標量)
生活習慣病の発症予防の観点から見て、妊婦と授乳婦が同年齢の非妊婦・非授乳中の女性と異なる量の炭水化物を摂取すべきとするエビデンスは見いだせていません。
したがって、目標量は妊娠可能年齢の非妊娠と非授乳中の女性と同じとしました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕