「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から食物繊維の「生活習慣病の重症化予防」を紹介します。
〔生活習慣病の重症化予防〕
食物繊維が数多くの生活習慣病の発症予防に寄与し得ることは前述のとおりであるため、食物繊維の積極的な摂取が、それらの疾患の重症化予防においても重要であろうと考えられます。
例えば、食物繊維が各種疾患と、その生体指標に及ぼす効果を検証した介入試験をまとめたメタ・アナリシスでは、体重、血中総コレステロール、LDLコレステロール、トリグリセライド、収縮期血圧、空腹時血糖で有意な改善が認められています。
また、こうした結果は、糖尿病患者を対象としたHbA1cの改善を指標とした介入試験のメタ・アナリシスでも同様であったことから、こうした指標の改善が関連する各種生活習慣病の重症化予防においては、食物繊維の積極的摂取が推奨されます。
どの程度の食物繊維摂取量を勧めるかについてはまだ十分な結論は得られていないものの、メタ・アナリシスでは、観察研究も含めて、25〜29g/日の摂取量で最も顕著な効果が観察されたと報告されています。
これは、現在の日本人成人の食物繊維摂取量に比べるとかなり多く、目標量よりも多くなっています。したがって、少なくとも目標量を勧めるのが適当であると考えられます。
高食物繊維摂取と便秘改善の関連性を検証した成人を対象とする介入試験のメタ・アナリシスでは、食物繊維の追加摂取によって排便回数増加、便の粘性の改善を認めたとしていますが、それらのアウトカムの測定に用いられた指標が一定ではなかったことが研究の限界としてあげられています。
また、同報告においては1日10g、少なくとも4週間にわたる追加摂取が勧められていること、腸にガスがたまるといった症状の悪化も報告されていることから、便秘の重症化予防を目的とした食物繊維の追加摂取は慎重に判断されるべきです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕