「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から脂溶性ビタミンのビタミンAの「推定平均必要量、推奨量の策定方法」を紹介します。
〔推定平均必要量、推奨量の策定方法〕
推定平均必要量は、次のように算出することができます。
安定同位元素で標識したレチノイドを用いてコンパートメント解析(注:体内の化合物の動態を調べるときに、例えば体内を「血液」「肝臓」「その他」の3つ程度のコンパートメントに分け、その働きをモデル化して、「血液」中の化合物を放射性標識や安定性同位体標識によって追跡することにより、コンパートメント内の化合物の濃度や流入・流出速度を推定・算出するような解析方法をいう)により、ビタミンAの不可逆的な体外排泄処理率を算出すると、ビタミンA摂取量・体内貯蔵量に比較的高いと考えられるアメリカの成人で14.7μmol/日(4mg/日)、ビタミンAの摂取量・体内貯蔵量が比較的低いと考えられる中国の成人で5.58μmol/日(1.6mg/日)となり、それぞれ体内貯蔵量の2.35%、1.64%でした。
ビタミンAの体外排泄量は、ビタミンAの栄養状態に関係なく、体内貯蔵量の約2%と、ほぼ一定であると考えられるために、「健康な成人の1日のビタミンA体外最小排泄量(μg/日)=体内ビタミンA最小蓄積量(μg)×ビタミンA体外排泄処理率(2%/日)」という式が成り立ちます。
一方、体重1kg当たりの体内ビタミンA最小蓄積量(μg/kg 体重)は、「肝臓内ビタミンA最小蓄積量20μg/g(0.07μmol/g)×成人の体重1kg当たりの肝臓量(21g/kg 体重)×ビタミンA蓄積量の体全体と肝臓の比(10:0)」として表すことができます。
そこで、体重1kg当たり1日のビタミンA体外排泄量(μg/kg 体重/日)は、「体内ビタミンA最小蓄積量(20μg/g×21g/kg×10/9)×ビタミンA体外排泄処理率(2/100)=9.3μg/kg 体重/日」となり、ビタミンA体外排泄量9.3μg/kg 体重/日を補完するために摂取しなければならないビタミンAの必要量は9.3μgRAE/kg 体重/日と推定されます。
言い換えると、9.3μgRAE/kg 体重/日を摂取することにより、ビタミンA欠乏症状を示さず、肝臓内ビタミンA貯蔵量の最低限を維持できることになります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕






