食事摂取基準233 葉酸2

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から水溶性ビタミンの葉酸の基本的事項の「消化、吸収、代謝、食事性葉酸当量」を紹介します。

〔消化、吸収、代謝、食事性葉酸当量〕
食品中の葉酸(folate)は、調理・加工の過程や、摂取された後に、胃の中(胃酸環境下)や小腸内で、たんぱく質から遊離します。

遊離した葉酸(folate)のほとんどは腸内の酵素によって消化され、モノグルタミン酸型の5-メチルテトラヒドロ葉酸となった後に、小腸から促通拡散あるいは受動拡散によって吸収されて血管内に輸送され、細胞内に入ります。

細胞内で、5-メチルテトラヒドロ葉酸はポリグルタミン酸化され、さまざまな補酵素型に変換されてから利用されます。

消化過程は食品ごとに異なり、同時に摂取する他の食品によっても影響を受けます。

葉酸(folic acid)に比べると通常の食品中の葉酸(folate)の生体利用率は低く、25〜81%と報告されています。

また、日本人を対象とした試験では、葉酸(folic acid)に対する通常の食品中の葉酸(folate)の相対生体利用率は50%と報告されています。

これらの結果に基づき、1998年に発表されたアメリカ・カナダの食事摂取基準では「食事性葉酸当量(dietary folate equivalents:DFE)」という考え方を採用して、次式を用いた上で、通常の食品に含まれる葉酸(folate)として摂取すべき量を設定しています。

食事性葉酸当量(1μg)=通常の食品に含まれる葉酸(folate)(1μg)=通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(folic acid)(0.5μg)

〔空腹時(胃内容物がない状態)に摂取する場合〕=通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(folic acid)(0.6μg)(食事とともに摂取する場合)

後述するように、この食事摂取基準では、推定平均必要量と推奨量は通常の食品から摂取される葉酸(folate)を対象として設定して、耐容上限量はサプリメント等から摂取される葉酸(folic acid)を対象として設定しています。

上式は両者の生体利用率の違いを理解するために活用できます。

その後、通常の食品中の葉酸(folate)の相対生体利用率は80%程度であろうとした報告、通常の食品な中の葉酸(folate)の相対生体利用率を測定するための比較基準に葉酸(folate)を用いるのは正しくないとする報告もあり、現在でも通常の食品中の葉酸(folate)の相対生体利用率を正確に見積もるのは困難です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕